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SURA 27.蟻章 〔アン・ナムル〕


慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。


1.ター・スィーン。これはクルアーンの印(凡ての事物を)明瞭にする啓典の印であり,


2.導き,信者への吉報である。


3.かれらは礼拝の務めを守り,定めの喜捨をなし,堅く来世を信じる者である。


4.われは来世を信じない者には,自分の行いを(一見)立派に見えるようにした。それで,かれ


らは(舷?)惑されさ迷う。


5.これらは悪い懲罰が科せられる者で,来世においては,かれらこそ最大の失敗者であろう。


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6.本当にあなたは,英明にして全知な御方の御許からクルアーンを授かっている。


7.ムーサーが,その家族に向かって言った時を思い起せ。「本当にわたしは,遙かに一点の火を


認めた。わたしは,そこからあなたがたに火についての消息を(宙?)すであろう。または火把


を持ち帰り,それであなたがたは,暖められるかもしれない。」


8.かれがそこに来ると,声があった。「火の中にいる者,そしてその廻りの者に祝福あれ。万有


の主,アッラーに讃えあれ。」


9.ムーサーよ,本当にわれこそは,偉力ならびなく英明なアッラーであるぞ。


10.さあ,あなたの杖を投げなさい」。ところがかれは,それが蛇のように動くのを見ると,逃


げだし,後ろも見なかった。(その時,声があっていった。)「ムーサーよ,あなたは恐れては


ならない。本当に使徒たる者は,われの前で恐れてはならない。


11.悪を行った者は別だがそれでも,その後,悪の代りに善を行う者は(恐れることはない)。


本当にわれは覚容にして慈悲深き者である。


12.またあなたの手をふところに入れなさい。支障もないのに,出すと白くなろう。(これらは


)フィルアウンとその民に示す,9つの印の1部である。本当にかれらは,主の掟に背く民である


。」


13.わが明瞭な印が目に見えてかれらの許に来た時,「これは明らかに魔術である。」とかれら


は言った。


14.かれらは心の中ではそれを認めながら,不義と高慢さからこれを否認した。それでこれら悪


を行う者の最後がどうであったかを見るがいい。


15.本当にわれは,ダーウードとスライマーンに知識を授けた。両人は言った。「信心深い数多


いしもベの中から,わたしたちを選ばれた方,アッラーを讃えます。」


16.スライマーンはダーウードの後を継ぎ言った。「人びとよ,わたしたちは鳥の言葉を教えら


れ,また凡てのものを授けられた。これは明らかに(アッラーの)恩恵である。」


17.スライマーンの命令でかれの軍勢が集められたが,かれらはジンと人間と鳥からなり,(き


ちんと)部隊に編成された。


18.やがて蟻の谷に来た時,一匹の蟻が言った。「蟻たちよ,自分の住・かに入れ。スライマー


ンとその軍勢が,それと知らずにあなたがたを踏・躙らないよう。」


19.そこでかれ(スライマーン)は,その言葉の可笑しさに顔を綻ばせ,(祈って)言った。「


主よ,わたしと両親に与えられたあなたの恩恵に感謝し,あなたの御喜びに与かる善行に励むよ


 わたしを励まし,またあなたの慈悲で,わたしを正しいしもベの中に入らせて下さい。」


20.またかれは鳥たちを検閲して,言った。「どうしたのですか。ヤツガシラ鳥がいないではな


いですか。あれも欠席組の中だったのですか。」


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21.「わたしは厳しい刑で,必ずあれを処罰し,あるいは殺すでしょう。明瞭な理由をわたしに


持って来ない限りは。」


22.だが,長く待つまでもなく,それは(罷り出て)言った。「わたしは,あなたの御気付きに


ならない事を知りました。わたしは確実な情報を,サバアから持って来ました。


23.わたしは或る婦人が,人びとを治めているのを発見しました。かの女には凡てのものが授け


られ,また素晴しい王座がございます。


24.わたしはかの女とその民が,アッラーを差し置いて太陽を拝んでいるのを見届けました。そ


して悪魔が,かれらに自分たちの行いを立派だと思い込ませ,正道からかれらを閉め出している


ので,正しく導かれておりません。


25.そこでかれらは,天と地の隠されたことを現わされる,アッラーを拝していません。あなた


がたの隠すことも現わすことも知っておられる方を(拝していません)。


26.アッラー,かれの外に神はありません。かれは壮厳な玉座の主であられます。」 〔サジダ〕


27.(スライマーン)は言った。「わたしはあなたが,真実を語ったのか,または嘘付きの徒な


のか,直ぐ分るであろう。


28.あなたはわたしのこの手紙を持って行って,それをかれらに落としなさい。それから退いて


,かれらが何と返事するかを見るがいい。」


29.かの女(王)は言った。「長老たちよ,本当に尊い手紙がわたしに届けられました。


30.本当にそれはスライマーンから,慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において((西?)され


たもの)。


31.それはこう言っている。わたしに対しあなたがたは高慢であってはなりません。(真の教え


に)服従してわたしのもとに来なさい。」


32.かの女は言った。「長老たちよ,この事に就いてわたしに意見を聞かせて下さい。あなたが


たが証言するまでは,わたしは事を決定しないでいよう。」


33.かれらは言った。「わたしたちは力量もあり,烈々たる武勇も授っています。だが大命はあ


なたさまの手にあります。どう御命令なさるかよく御考え下さい。」


34.かの女は言った。「本当に帝王たちが町に入る時は,それを荒廃させ,またその住民の最も


身分の高い者を最も卑しくします。かれらはこのように行うのが,常です。


35.それでわたしは,かれらに贈物を届けましよう。そして使節がどんな(返事を)持ち帰るか


見ましょう。」


36.(使節が)スライマーンを訪れると,かれは言った。「あなたがたは,わたしの富を増やそ


うとするのですか。だがアッラーがわたしに与えたものは,あなたがたが贈るものよりも優って


います。いや,あなたがたは,自分の贈物で(勝手に)喜んでいるだけです。


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37.かれらの許に帰れ,わたしは必ずかれらが立ち向かえない軍勢でもって臨・,かれらの面目


を失わせ身分の卑しい者にしてそこから追い出すでしょう。」


38.(スライマーンは自分の民に)言った。「長老たちよ。あなたがたの中,かれらが服従して


わたしの許に来る前に,かの女の王座をわたしに持って来ることが出来るのは誰ですか。」


39.するとジンの大物が言った。「わたしはそれを,あなたが席から御立ちになる前に,持って


参りましょう。本当にわたしは,それに就いては能力があり信頼出来る者です。」


40.啓典の知識をもつ者は言った。「わたしは一つの瞬きの間に,あなたにそれを持って参りま


しょう。」(スライマーンは)それがかれの前に置かれたのを見て,言った。「これはわたしの


主の御恵・。わたしが感謝するか,または恩知らずかを試・られるためです。本当に感謝する者


は,自分のために感謝するも同然。誰が恩知らずであってもわたしの主は,満ち足られる方崇高


な方です。」


41.スライマーンは,「かの女の王座の装いを変えなさい。かの女が導かれているのか,導かれ


ていないのかを試して見よう。」と言った。


42.そこでかの女が到着すると「あなたの王座は,このようであったのか。」と尋ねた。かの女


は言った。「それらしゅうございます。」さてかれは(考えた)。「わたしたちは,かの女より


以前に知識を与えられ(アッラーに)服従,帰依しています。


43.だがかの女がアッラー以外に拝していたものが,かの女を行き詰らせました。本当にかの女


は,不信心な民の一人でした。」


44.(それから)かの女は,宮殿に入るよう告げられた。だがそれを見た時,池だと思い,(裾


を上げて)かの女は両脚を現わした。スライマーンは言った。「本当にこれはガラス張りの宮殴


です。」かの女は,「主よ,本当にわたしは自ら不義を犯しました。(今)わたしは,スライマ


ーンと共に万有の主に服従,帰依いたします。」と言った。


45.われは先に,サムードの民にその兄弟のサーリフを遣わした。(かれは)「アッラーに仕え


なさい。」(と申し渡した)。ところが見るがいい。かれらは2派に分れて争った。


46.かれは言った。「わたしの人びとよ,あなたがたは,何故善い事を差し置いて悪事に急ぐの


ですか。何故あなたがたは,アッラーの御赦しを請わないのですか。必ず御恵・にあずかるのに


。」


47.かれらは言った。「わたしたちがあなたと,あなたの仲間の者に就いて鳥占いすると凶と出


ました。」(かれは答えて)言った。「あなたがたの凶兆は,アッラーの御許にあります。いや


,あなたがたこそは(アッラーによって)試・られている民です。」


48.この町には9人の一団がいた。かれらは地上に害悪を流し改心しなかった。


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49.かれらは言った。「かれ(サーリフ)とその家族を夜襲するように,アッラーにかけて誓い


あおう。その後かれの保護者に告げましょう。『わたしたちは,かれの家族の殺害を目撃してい


ません。本当であり嘘ではありません。』」


50.かれらは策謀して企んだが,われも策を巡した。だがかれらは(それに)気付かない。


51.だから見るがいい。かれらの策謀の最後がどんなものであったかを。本当にわれは,かれら


とその民を一斉に滅ぼしてしまった。


52.かくてこれこそ,不義を行ったために廃墟と化したかれらの住居跡である。本当にこの中に


知識ある民への一つの印がある。


53.そしてわれは,信仰して主を畏れる者たちを救った。


54.(われはまた)ルート(を遣わした),かれがその民にこう言った時を思い起しなさい。「


あなたがたは(不義だと)認めていながら,破廉恥な行為をするのですか。


55.あなたがたは,情欲をもって女たちを差し置いて男のもとに行くのですか。いや,あなたが


たは,本当に無知の民です。」


56.だがかれらの民は,(真面目に)答えず,「この町からルートの家族を追い出しなさい。


かれらは本当に純潔振る人びとです。」と言うだけであった。


57.だがわれは,かれ(ルート)の妻を除いてかれとかれの一家を救い,かの女を後に残すこと


にした。


58.そしてわれはかれらの上に,(石の)雨をどっと降らせた。この雨は警告された者にとり災


いであった。


59.言ってやるがいい。「アッラーに讃えあれ。かれが選ばれるしもべたちの上に平安あれ。ア


ッラーが好ましいか,またはかれらが(かれに)配する神々か。


60.誰が,天と地を創造したのか。また誰があなたがたのために,天から雨を降らせるのか。そ


れでわれは,美しい果樹園をおい茂らせる。そこの樹木を成長させることは,あなたがたには出


来ない。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。いや,かれらは(正しい道から)


外れた民である。


61.誰が,大地を不動の地となし,そこに川を蝕け,そこに山々を置いて安定させ,2つの海の間


に隔壁を蝕けたのか。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。いや,かれらの多く


は知らないのである。


62.苦難のさいに祈る時,誰がそれに答えて災難を除き,あなたがたを地上の後継者とするのか


。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。だがあなたがたは,少しも留意すること


がない。


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63.陸と海の情黒の中で,あなたがたを導くのは誰か,また慈悲の前兆の吉報として,風を送る


のは誰か。アッラーと共に(それが出来る外の)神があろうか。アッラーはかれらが(主に)配


して崇めているもの(偶像)の上にいと高くおられる。


64.創造をなし,それからそれを繰り返し,天と地からあなたがたを扶養するのは誰か。アッラ


ーと共に(それが出来る外の)神があろうか。言ってやるがいい。「あなたがたが真実を語って


いるというのなら,その証拠を出しなさい。」


65.言ってやるがいい。「幽玄界を知るものは,天地の間でアッラーの外にはないのである。」


またかれらは,何時甦らされるか感知出来ない。


66.いや,かれらの知識は来世に及ばない。いや,それに疑いを抱いている。いや,それに就い


てかれらは盲目である。


67.不信心の者は言う。「わたしたちやわたしたち祖先が,泥になってしまってから,本当に甦


らされるのであろうか。


68.わたしたちもわたしたちの祖先も,以前,このことを約束された。だが本当にこれは,昔の


人の物語に過ぎない。」


69.言ってやるがいい。「地上を旅して,これら罪深い者の最後がどうであったかを見届けよ。





70.あなたは,かれらに就いて悲嘆しなくてもよい。またかれらの策謀に心を痛めなくてもよい





71.かれらは言うのである。「あなたがたが真実を言うのなら,この(威嚇の)約束(が来るの


)は何時ですか。」


72.言ってやるがいい。「あなたがたの急いでいることの幾つかは,あなたがたに迫っているか


も知れない。」


73.本当にあなたの主は,人間に対し恩恵を施す御方である。だが,かれらの多くは感謝もして


いない。


74.本当にあなたの主は,かれらが胸に隠すことも現わすことも知っておられる。


75.天と地の隠されたことは,等しく明瞭に書冊の中に(記されて)ある。


76.本当にこのクルアーンは,イスラエルの子孫に,かれらが議論している最も大きな問題につ


いて語るものである。


77.本当にそれは,信仰する者たちに対する導きであり慈悲である。


78.本当にあなたの主は,御自分の叡智をもってかれらの間を裁定されるであろう。かれは,偉


力ならびなく全知であられる。


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79.そこであなたは(凡て)アッラーに御任せしなさい。本当にあなたは,明白な真理の(道の


)上にいるのである。


80.本当にあなたは,死者に聞かせることは出来ない。また聞えぬ者に呼び掛けても聞かせるこ


とは出来ない。(ことに)かれらが背を向けて引き取る時は。


81.またあなたは見えない者を,迷いから導くことは出来ない。あなたはただ,わが印を信じる


者たちに聞かせられるだけである。そうすればかれらは服従,帰依するであろう。


82.かれらに対し御言葉が実現される時,われは大地から一獣を現わし,人間たちがわが印を信


じなかったことを告げさせよう。


83.その日われは,それぞれの民族から,わが印を虚偽であるとした一群を集め,隊列に並べよ


う。


84.(審判の席)まで,かれらが来た時仰せられよう。「あなたがたは,(自分の)知識では,


わが印を理解出来なかったのに,それらを嘘であるとして信じなかったではないか。(そうでな


かったら)あなたがたは一体何をしていたのか。」


85.そして御言葉が,かれらに対し下されると,その自ら行った悪行のためにかれらは(一言も


)言えないであろう。


86.かれらは気が付かないのか。われはかれらの憩いのために夜を蝕け,またものが見えるよう


に昼を定めたではないか。本当にこの中には,信じる人びとへの印がある。


87.ラッパの吹かれる日(をかれらに警告しなさい)。アッラーが御好・の者の外は,天にあり


地にある凡てのものは恐れ戦き,皆身を低くしてかれ(の御前)に罷り出よう。


88.あなたは山々を見て堅固であると思うだろう。だがそれは雲が散るように通り過ぎていくの


である。それは凡てのものを,完成なされるアッラーの御業である。本当にかれはあなたがたの


行うことを熟知なされる。


89.善事を携えて来る者には,それよりも善いものを与えられ,その日,恐れから安全になろう





90.悪事を携えて来る者は,顔から先に火獄に投げ込まれよう。さてもあなたがたは自分の行っ


たこと以外のことで,報われようか。(そんなことはない。)


91.わたしは,聖域となされたこの町(マッカ)の主にだけ仕えなさいと命じられた。凡ての有


はかれに属する。わたしは,服従,帰依する者の一人であるよう命じられ,


92.またクルアーンをヌ誦するよう


(命じられた)。それで導きを受ける者は,自分自身のために導かれるのである。そして迷う者


には,「わたしは警告者の1人に過ぎない」と言ってやるがいい。


93.また言ってやるがいい。「アッラーを讃えよ。かれは間もなく数々の印を示される。そして


あなたがたも,それを知ることになろう。主はあなたがたの行うことを,疎かになされない。」


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SURA 28.物語章 〔アル・カサス〕


慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。


1.ター・スィーン・ミーム。


2.これらは,明白な天啓の書の御印である。


3.われは信仰する者のために,ムーサーとフィルアウンの物語の1部をありのままあなたに読誦


しよう。


4.本当にフィルアウンは,この国において専横を極め,その民を諸党派に分け,かれらの中の一


派を押さえて男児を殺し,女児は生かして置いた。本当にかれは非道であった。


5.われは,この国で虐げられている者たちに情けを懸度いと思い,かれらを(信仰の)指導者と


なし,(この国の)後継ぎにしようとした。


6.そしてこの国にかれらの地歩を確立させて,フィルアウンとハーマーンの軍勢に,かれらが警


戒していたことを目の当たりに示そうとした。


7.そこでわれは,ムーサーの母に啓示して言った。「かれに乳を飲ませなさい。かれの(身の)


上に危険を感じた時は,かれを川に投げ込・,恐れたり悲しんではならない。われは必ずかれを


あなたに返し,使徒の一人とするであろう。」


8.フィルアウンの家族は,(他日)かれらの敵になり,悲し・の種となるかれを拾い挙げた。本


当にフィルアウンとハーマンそしてその軍勢は,罪深い者たちであった。


9.フィルアウンの妻は言った。「(これは)わたしとあなたの目の喜びです。かれを殺してはいけ


ません。わたしたちの役に立つこともありましょう。また養子にしてもよい。」かれらは(その


行っていることの意味に)気付かなかった。


10.ムーサーの母の心は空になった。もしわれが,その心を(信仰で)強くしなかったならば,


かの女は危くそのことを,打ち明けてしまうところであった。やっとかの女は,信者の一人とし


て留まった。


11.そしてかの女は(ムーサーの)姉に,「かれ(の後)を付けなさい。」と言った。それでか


の女は,遠くからかれを見守っていたので,かれらは何も気付かなかった。


12.われは前もってかれ(ムーサー)に乳母(の乳)を禁じて置いた。それでかの女(ムーサー


の姉)は言った。「あなたがたに,かれを育てる家族をお知らせしましょうか。かれに懇に付き


添う者たちであります。」


13.こうしてわれは,かれをその母に返してやった。かの女の目は生気を取り戻し悲し・も消え


失せた。かの女はアッラーの約束が,真実であることを納得した。だがかれらの多くは(このこ


とが)分らなかった。


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14.かれが成年に達し立派な者になった時,われは英知と知識を授けた。このようにわれは,善


行をなす者に報いる。


15.(ある時)かれは,人が注意していない隙に町に入り,2人の者がそこで相争っているのを見


かけた。その1人はかれの一派の者で,外は敵方の者であった。かれの一派の者が,敵方の者に


対し,かれに加勢を求めた。そこでムーサーはかれを挙で打って,息の根を正めてしまった。か


れは言った。「これは悪魔の仕業である。本当にかれは,人を惑わす公然の敵である。」


16.かれは(祈って)言った。「主よ,本当にわたしは自ら不義を犯しました。どうかわたしを


御赦し下さい。」それで(アッラーは)かれを赦された。本当にかれは覚容にして慈悲深くあら


れる。


17.かれは申し上げた。「主よ,あなたはわたしに恩恵を与えて下さいました。だからわたしは


,もう決して罪を犯す者たちの味方にはなりません。」


18.翌朝かれは,町で,あたりを警戒し,恐れを抱きながら町を見回すと,見るがいい。前日か


れに援助を求めた者が,かれに助けを請うて叫んだ。ムーサーはかれに言った。「あなたはよく


よく間違いをしでかす男だ」。


19.それでかれが,自分たちの敵である者に暴力を振おうと決心した時,相手は言った。「ムー


サーよ,あなたは昨日人を殺したように,わたしをも殺そうとするのですか。あなたは地上にお


いて,調和を計ることを望まない暴君になりたいのでしょう。」


20.その時一人の者が町の一番はずれから走って来て言った。「ムーサーよ。長老たちがあなた


を殺そうと相談している。だから(すぐ)立ち去りなさい。わたしはあなたの誠実な忠告者です


。」


21.それでかれは,恐れながら(あたりを)見回し,そこから逃げ出し,(祈って)「不義の民


からわたしを御救い下さい。」と言った。


22.かれは顔をマドヤンの方に向けて,「主は,わたしを平和な正しい道に御導き下さるかもし


れません。」と言った。


23.それからマドヤンの水場に来て・ると,かれは一群の人びとが(その家畜に)水をやってい


るのを見た。また,かれらの片隅に,2人の婦人が(懸命に家畜を水場に近よらせまいとして)


後方に控えているのを見かけた。かれは言った。「お2人はどうかなされたのですか。」2人は言


った。「わたしたちはその牧夫たちが帰るまで,水をやることが出来ません。わたしたちの父は


,大変年老いています。」


24.そこでかれは2人のために(家畜の群に)水をやり,それから木陰に退いて(祈って)言った


。「主よ,あなたがわたしに御授けになる,何か善いものが欲しいのです。」


25.2人の女の中の1人が,恥ずかしげにかれのところにやって来て言った。「わたしたちのため


に水をやって下さったので,父があなたを御招きして,御礼したいそうです。」そこでかれ(ム


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ーサー)はかれのところにやって来て,身の上話をした。かれ(父親)は言った。「心配なさる


な。あなたは不義の民から逃れたのです。」


26.2人の女の1人が言った。「かれを御雇いなさいませ。あなたのために雇って一番善いのは,


強健で誠実(な人物)です。」


27.かれ(父親)は言った。「あなたが,もし8年間わたしのために働いてくれれば,わたしは2


人の娘の中の1人を,あなたに妻せたい。もし10年を費やしたいならば,それもあなたの御自由


に任せよう。わたしはあなたに,無理強いするつもりはない。アッラーが御好・なら,わたしが


正しい人間であることが,あなたにも分るでしょう。」


28.かれ(ムーサー)は言った。「それはわたしとあなたの間(の約束)であります。2つの期限


のどちらを満期としても,わたしを責めないで下さい。アッラーが,わたしたちの言ったことの


,証人であられます。」


29.それからムーサーが年期を満了し,家族と一緒に旅している時トール山の傍に,一点の火を


認めた。かれは家族に言った。「あなたがたは待っていなさい。わたしは火を認めた。あそこか


らあなたがたに消息を持って来よう。または火把を持ち返って,あなたがたを暖めよう。」


30.そこにやってくると,谷間の右側の,祝福された地にある一本の木から声がした。「おおム


ーサーよ,本当にわれは万有の主,アッラーであるぞ。


31.さ,あなたの杖を投げなさい。」するとかれはそれが蛇のように動くのを見て,踵を返して


逃げ出し,後ろも振り向かなかった。(その時また声がした)。「ムーサーよ,近寄れ。そして


恐れるな。本当にあなたは,堅く守護されている者である。


32.あなたの手を懐に入れなさい。何の触りもないのにそれは白くなろう。恐の念があるならば


,腕を(両脇に)締め付け(れば落付くだろう)。これらは,あなたの主からの,フィルアウン


とその長老たちに対する2つの証明である。本当にかれらは,主の掟に背く者である。」


33.かれは申し上げた。「主よ,わたしはかれらの1人を殺しました。それでかれらがわたしを殺


すのを恐れます。


34.しかしわたしの兄のハールーンはわたしよりも雄弁です。それでわたしの言葉が信じられる


援助者として,かれをわたしと一諸に遺わして下さい。わたしは,かれらに虚言の徒とされるこ


とを恐れます。」


35.かれは仰せられた。「われはあなたの兄を,あなたの片腕とし,またあなたがた両人に権威


を授けよう。そうすればわが印によってかれらはあなたがたに危害を与えられないであろう。あ


なたがた両人とあなたがたに従う者は,必ず勝利者となる。」


36.ムーサーがわれの明白な印をもって,かれらの許に来ると,かれらは言った。「これは作り


上げた魔術に過ぎません。わたしたちは,昔の祖先の間でも,こんなことは聞きませんでした。





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37.ムーサーは言った。「わたしの主は,誰がかれの御許から来たのか,また誰が(来世の)住


まいを得るか,を熟知される。悪を行う者は決して成功しません。」


38.フィルアウンは言った。「長老たちよ。わたし以外に,あなたがたに神がある筈がない。そ


してハーマーンよ,泥(を焼いた煉瓦)でわたしのために高殿を築け。そしてムーサーの神の許


に登って行こう。わたしには,どうもかれは虚言の徒であると思われる。」


39.かれとかれの軍勢は,地上において正義を無視し,高慢であった。そして自分たちは決して


われに帰されないのだと,考えていた。


40.それでわれは,かれとかれの軍勢を捕え,海に投げ込んだ。見るがいい。悪を行う者の最後


がどんなものであったかを。


41.われは,かれらを(人びとを)火獄に誘う先導者とした。復活の日には,かれらは助けられ


ることはない。


42.現世において,われはかれらに呪いを付き纒わせた。復活の日においても,かれらは嫌われ


るであろう。


43.本当にわれは,昔の幾世代を滅ぼした後,人びとの開眼のために,また導きと慈悲のために


,ムーサーに啓典を授けた。必ずかれらは訓戒を受け入れるであろう。


44.われがムーサーに命令を下した時,あなたは(シナイ山の)西側におらず,また(その)証


人でもなかった。


45.だが,われは(その後)幾世代を過ごさせ,かれらの生命を永らえさせた。あなたはまた,


マドヤンの民の間に住んで,かれらにわれの印の読誦もしたわけではなかった。だがわれは(啓


示を授け)使徒たちを遣わしたのである。


46.またわれが(ムーサーに)呼び掛けた時,あなたはシナイ(山)の傍らにいたわけではなか


った。だがあなたの主からの慈悲として(クルアーンが授けられ),あなた以前に1人の警告者


ももたなかった(マッカの)民に警告するため(あなたは遣わされたの)である。必ずかれらは


,訓戒を受け入れるであろう。


47.もしそうしなかったならば,かれらの手が先になした(行いの)ため,かれらには災厄が襲


いかかるであろう。その時になって,かれらは言うであろう。「主よ,何故あなたは,使徒をわ


たしたちに御遣わしにならなかったのか。わたしたちはあなたの印に従い,信心深い者になった


ものを。」


48.だが(今)わが手許から,真理がかれらに届けられると,言う。「ムーサーに与えられたも


のと同じようなものが,どうしてかれに与えられないのであろうか。」かれらは以前にも,ムー


サーに与えられたものを信じなかったではないか。かれらは,「2つとも魔術である。栗いに助


けあうものである。」と言った。「わたしたちは(どちらも)信じない。」と言ったりした。


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49.言ってやるがいい。「それなら,この2つよりも優れた導きとなる啓典を,アッラーの御許か


ら持って来い。あなたがたが真実なら,わたしはそれに従おう。」


50.それでかれらがもしあなたがたに答えられないなら,かれらは只,自分の(低い)欲望に従


っているに過ぎないことを知れ。アッラーからの導きがなく,自分の欲望に従う者以上に道に迷


う者があろうか。本当にアッラーは悪を行う民を御導きになられない。


51.今われはかれら(マッカの民)にも言葉を届けた。必ずかれらは訓戒を受け入れるであろう





52.われがこれ以前に啓典を授けた者たちはよく信仰している。


53.それがかれらに読誦されると,かれらは言う。「本当にこれは主から下された真理です。わ


たしたちはこれを信じます。わたしたちはこの(下る)以前からムスリムであったのです。」


54.これらの者は2倍の報奨を与えられよう。かれらは(よく)


耐え忍び,善をもって悪を退け,われが与えたものを施すために。


55.また,つまらない談話を耳にする時かれらは身を引いて言う。「わたしたちには,わたした


ちの行いがあり,あなたがたにはあなたがたの行いがある。あなたがたの上に平安あれ。わたし


たちは真理を拒む者を相手にしない。


56.本当にあなたは,自分の好む者(の凡て)を導くことは出来ない。だがアッラーは御心のま


まに導き下される。かれは導かれた者を熟知なされる。


57.かれらは言う。「わたしたちが,もしあなたと一緒になって導きに従うならば,わたしたち


はこの土地から追われることになろう。」われは,かれらのために安全な聖域を蝕け,われから


の糧として凡ての果実をそこに集めたではないか。だがかれらの多くはそれが分らない。


58.われは如何に多くの(安楽で裕福な)生活に有頂天になった町を,滅ぼしたことであろうか


。それ以来,かれらの居所には,(至極)僅かな人びとを除き住む者もない。(結局)われが,


それらの相続者である。


59.だがあなたの主はその(国の)首都に使徒を遣わし,かれらにわが印を読誦してからでなけ


れば1つの町をも滅ぼしたことがなかった。またその民が悪を行わない限り,町や村を滅ぼさな


かった。


60.あなたがたに与えられたものは,現世の生活のための便益と,その飾りに過ぎない。だがア


ッラーの御許にあるものこそ,最善で永遠に残るものである。あなたがたは悟らないのか。


61.われが良い約束を約し,それが果される者と,現世の生活の快楽を享受し,それから復活の


日に(懲罰ののために)連れ出されるような者と,同じであろうか。


62.その日(主は)かれらに呼びかけて,仰せられる。「あなたがたが言い張っていた,わが仲


間たち(の神々)は何処にいるのか。」


247


63.判決が言い渡される者たち(不信心者)は言う。「主よ,これらは,わたしたちが迷わせた


者(外の不信心者)です。かれらを迷わせましたが自分たちも迷っていたのです。だがわたした


ちは,あなたに対して潔白です。かれらが拝したのは,決してわたしたちではありません。」


64.すると言われよう。「あなたがたの仲間に祈るがよい。」それでかれらはそれらに祈るのだ


が,それらは答えない。かれらは懲罰を見るであろう。もしかれらが導かれていたならば(よか


ったものを)。


65.その日,かれはかれらに呼び掛けて仰せられる。「あなたがたは,使徒に何と答えたのか。





66.その日,(凡ての)消息はかれらに分らなくなり栗いに尋ねあうことも出来ない。


67.だが悔悟して信仰し,善行に動しんだ者は,成功者の中に入ることになろう。


68.あなたの主は,御望・のものを創られまた選ばれる。(だが)かれらは選ぶことは出来ない


のである。アッラーに讃えあれ。かれは,かれらが(主に)配するもの(偶像神たち)の上に高


くおられる。


69.またあなたの主は,かれらの胸に隠すことも,現わすことをも知っておられる。


70.かれこそはアッラー,かれの外に神はない。現世と来世における讃美はかれにこそ属し,か


れに(現世と来世における)命令は属し,またかれにあなたがたは帰されるのである。


71.言ってやるがいい。「あなたがたは考えられるのか。アッラーが復活の日まで夜を続けられ


たとすれば,あなたがたに光を与えられるものは,アッラーの外にどんな神があるのか。あなた


がたは,なお聞かないのか。」


72.言ってやるがいい。「あなたがたは考えられるのか。アッラーが復活の日まで昼を続けられ


たとすれば,休息する夜をあなたがたに与えられるものは,アッラーの外にどんな神があるのか


。あなたがたはなお分らないのか。」


73.かれは慈悲のこころから,夜と昼をあなたがたのために定められ,それであなたがたは休・


,またかれの恩典を求めることが出来る。必ずあなたがたは感謝するであろう。


74.その日,かれはかれらに呼び掛けて仰せられよう。「あなたがたが言い張っていた。かれの


同輩(の神々)は何処にいるのか。」


75.われは凡ての民からそれぞれ証人を挙げて言う。「あなたがたの証拠を持ち出せ。」その時


かれらは,真理はアッラー(御一人)のものであることを知り,またかれらが捏造していたもの


たちは消え去るであろう。


76.さてカールーンは,ムーサーの民の一人であったが,かれらに対し横柄な態度をとるように


なった。われは(夥しい)財宝をかれに与えたが,その(宝庫の)鍵は,数人の力の強い男たち


にとっても重かった。皆の者は,かれに言った。「有頂天になってはなりません。本当にアッラ


ーは思い上がっている者を御好・になられません。


248


77.アッラーがあなたに与えられたもので,来世の住まいを請い求め,この世におけるあなたの


(務むべき)部分を忘れてはなりません。そしてアッラーがあなたに善いものを与えられている


ように,あなたも善行をなし,地上において悪事に励んではなりません。本当にアッラーは悪事


を行う者を御好・になりません。」


78.かれは言った。「これを授かったのも,わたしが持っている知識(能力)のためである。」


アッラーがかれ以前に,いく世代を滅ぼしたかを,知らなかったのか。かれらは力の点でかれよ


りも強く,蓄えも巨額であった。凡そ罪を犯した者は,その罪に就いて(直ぐには)尋ねられな


いのである。


79.そこでかれ(カールーン)は,煌びやかに身を飾って人びとの中に出て行った。現世の生活


を冀っている者たちは言った。「ああ,わたしたちもカールーンに与えられたようなものが戴け


たならばなあ。本当にかれは,素晴しい幸運の持主です。」


80.だが(真の)知識を授けられていた者たちは言った。「情けないことを言うな。信仰して善


い行いに励む者にとっては,アッラーの報奨こそ最も優れています。だがよく耐え忍ぶ者だけが


,それを戴くだろう。」


81.それからわれは,かれとその屋敷を地の中に埋めてしまった。かれには,アッラーの外に助


け手もなく,また自分を守ることも出来なかった。


82.前日(まで)かれの立場を羨んでいた者たちは,言い始めた。「ああ,本当にアッラーは,


御望・のしもべたちに,多くも,また少くも,恵まれる(ことが分った)。アッラーの深い御恵


・がなかったならば,わたしたちもきっと(地の中に)埋まっていたであろう。ああ,不信心の


者たちは,決して成功しないことが分りました。」


83.来世の住まいとはこのようなもの。われは地上において威張りたがったり,悪を行わない者


にこれを授ける。善果は,主を畏れる者にある。


84.善行をなす者には,それに優るものを与え,悪行をなす者には,かれらの悪行に応じて報い


る。


85.本当に,クルアーンをあなたに授けられるかれは,必ずあなたを帰る所(マッカ)に帰され


るであろう。言ってやるがいい。「わたしの主は,導きを(西?)す者が誰か,また明らかに迷っ


ている者が誰であるかを,最もよく知っておられる。」


86.啓典があなたに届けられることは,あなたの予期しなかったところで,偏にあなたの主から


の慈悲である。だから決して不信心者を支持してはならない。


87.アッラーの印があなた(ムハンマド)に下された後,かれら(背信者)があなたをそれ(ア


ッラーの印)から遠ざけるようなことがあってはならない。(人びとを)


あなたの主に招け。決して多神教徒の仲間になってはならない。


249


88.またアッラーと一緒に,外のどんな神にも祈ってはならない。かれの外には,神はないので


ある。かれの御顔の外凡てのものは消滅する。裁決はかれに属し,あなたがたは(凡て)かれの


御許に帰されるのである。


SURA 29.蜘蛛章 〔アル・アンカブート〕


慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。


1.アリフ・ラーム・ミーム。


2.人びとは,「わたしたちは信じます。」と言いさえすれば,試・られることはなく,放って置


かれると考えるのか。


3.本当にわれは,かれら以前の者も試・ている。アッラーは,誠実な者を必ず知り,また虚言の


徒をも必ず知っておられる。


4.悪を行う者は,われを出し抜くことが出来ると考えているのか。かれらの判断こそ,災いのも


とである。


5.アッラーに会うことを切望する者よ,アッラーの(定められる)期限は確かに来る。かれは全


聴にして全知であられる。


6.信仰のために奮闘努力する者は,自分自身のために奮闘努力しているのである。アッラーは,


すべてのものに,何一つ求めない。


7.われは信仰して,善行に動しむ者には,いろいろの罪を取り消し,その行った最善のことに,


必ず報いるであろう。


8.われは人間に,両親に対して規切にするよう命じた。だがもしかれら(両親)が,あなたに対


し何だか分らないものをわれに配するように強いるならば,かれらに従ってはならない。あなた


がたは(皆)われの許に帰る。その時われは,あなたがたの行ったことを告げるであろう。


9.われは信仰して,善行に勤しむ者を,必ず正義の人びとの中に入らせるであろう。


10.人びとの中には,「わたしたちは,アッラーを信仰します。」と言うが,一度アッラー(の


道のため)に苦難に会うと,人間の迫害をまるでアッラーの懲罰であるかのように考える者があ


る。またもしあなたの主からの助け(と勝利)が(声?)されると,かれらは必ず,「本当にわ


たしたちは,あなたがたと一緒でした。」などと言う。万人の胸の中に抱くことを最もよく知る


御方は,アッラーではないか。


11.アッラーは,信仰する者たちも,偽信者たちをも必ず知っておられる。


12.不信心の者は,信仰する者に向かって,「わたしたちの道に従いなさい。わたしたちがあな


たがたの罪を必ず負ってやりましょう。」と言う。だがかれらは,少しもあなたがたの罪を,負


いはしない。本当にかれらは虚言の徒である。


250


13.だがかれらは自分の重荷を負い,そのうえ(外の)重荷をも負うであろう。復活の日には,


かれらの虚構していたことに就いて必ず問いただされるであろう。


14.且つてわれはヌーフを,その民に遣わした。かれはその間に留まること,千年に欠ける50年


。人びとは悪を行っている間に,洪水に襲われた。


15.その時われは,かれと方舟の仲間とを救い,それを万有のための訓戒とした。


16.そしてイブラーヒームがその民にこう言った時を思え。「アッラーに仕え,かれを畏れなさ


い。それがあなたがたのために最も良い。もしあなたがたが理解するならば。


17.あなたがたは,アッラーを差し置いて偶像を拝し,虚偽を捏造しているに過ぎない。あなた


がたがアッラーを差し置いて拝するものたちは,あなたがたに御恵・を与える力はない。だから


,アッラーから糧を求め,かれに仕え,感謝しなさい。あなたがたはかれの御許に帰されるので


ある。


18.あなたがたが嘘付き呼ばわりしても(よい)。だがあなたがた以前の諸民族も嘘付き呼ばわ


りしたものである。使徒は,只公明に伝えるだけである。」


19.かれらはアッラーが,如何に創造をなされ,それからそれを繰り返されるかを知らないのか


。それはアッラーには,本当に容易なことである。


20.言ってやるがいい。「地上を旅して観察せよ。かれが如何に,最初の創造をなされたかを。


やがてアッラーは,最後の(甦りの)創造をなされる。本当にアッラーは凡てのことに全能であ


られる。」


21.かれは御望・の者を罰し,御望・の者に慈悲を垂れられる。あなたがたはかれの御許に返さ


れるのである。


22.あなたがたは天においても地にあっても,かれ(の計画)を,頓挫させることは出来ない。


またアッラーの外に,あなたの守護者も援助者もないのである。


23.アッラーの印を信じないでまた,かれとの会見を信じない者にはわれの慈悲に与かる望・は


なく,痛ましい懲罰があるだけである。


24.かれ(イブラーヒーム)の民の返答は,只「かれを殺しなさい。焼いてしまいなさい。」と


言うだけであった。だがアッラーは,火からかれを御救いなされた。本当にこの中には,信仰す


る人びとへの印がある。


25.またかれは言った。「あなたがたは,現世の生活において,お栗いの慈し・としてアッラー


を差し置いて偶像を崇めている。だが復活の日には,あなたがたは栗いに(関係を)否認し合い


,栗いに呪い合うであろう。住まいといえば火獄であり,あなたがたには,どんな救助者もない


のである。」


26.ルートはかれ(イブラーヒーム)を信じた。かれは言った。「わたしは主(の御許)に移り


住もう。本当にかれは偉力ならびなく英明であられる。」


251


27.またわれは,かれにイスハークとヤアコーブ(のような子孫)を授け,その子孫の間に,預


言の天分と啓典を授け,現世の報奨をも与えた。来世においてもかれは必ず正義の徒の仲間にな


ろう。


28.またルート(を遣わし),かれの民に,こう言った時を思え。「あなたがたは醜行をしてい


る。あなたがた以前に,どんな世代でもしなかったことを。


29.本当にあなたがたは,男性に近付き,また公道で強盗を働く。またあなたがたの集りで,忌


まわしい事をしている。」だがかれの民は(答えて),只「あなたが真実を言うのなら,わたし


たちにアッラーの懲罰を(湾?)して・なさい。」と言うだけである。


30.かれは(祈って)言った。「主よ,不義を行う民からわたしを御助け下さい。」


31.わが使徒(天使)たちが,吉報を持ってイブラーヒームの許に来た時,かれらは言った。「


わたしたちは,この町の人びとを滅ぼそうとするところである。本当にここの住民は,悪を行う


者たちばかりである。」


32.かれ(イブラーヒーム)は言った。「だがルートがそこにいる。」かれらは言った。「わた


したちは,誰がそこにいるかを熟知している。落伍者であるかれ(ルート)の妻の外は,かれも


その家族をも必ず救うであろう。」


33.わが使徒たち(天使)がルートのところに来た時,かれは自分の無力さを感じ,人びとのた


め悲しんだ。かれら(天使)は言った。「心配してはなりません。悲しんではなりません。本当


にわたしたちは,あなたの妻の外は,あなたとあなたの家族をも救います。かの女は落伍者です





34.わたしたちは,この町の人びとが邪悪無法なため,かれらに天から懲罰を下そうとするとこ


ろです。」


35.本当にわれはそれによって,理解ある民への明白な印を残したのである。


36.またわれは,マドヤン(の民)にその同胞のシュアイブを遺わした。かれは言った。「わた


しの人びとよ,アッラーに仕え,最後の日を待ち望・なさい。悪を行って,地上を退廃させては


ならない。」


37.だがかれらはかれを嘘付き呼ばわりした。それで大地震がかれらを襲い,翌朝かれらは家の


中に平伏していた。


38.またアードとサムードに就いては,(廃墟と化した)かれらの住まいによって,既にあなた


がたに明瞭である。悪魔はかれらに,自分の所行を立派であると思わせ,立派な見識を与えられ


ていたのに,正道から離反させる結末となった。


39.またカールーンとフィルアウンとハーマーンのことであるが,ムーサーが明証 ゥれに(西?)し


たが,それでもかれらは,地上において高慢であった。だがかれらは(われを)淡ぐことは出来


なかった。


252


40.それでわれは,かれらをそれぞれの罪に照らして懲じめた。ある者には砂石の暴風を送り,


またある者には一声(懲罰)で襲いかかり,またある者は大地に沈め,またある者を溺れさせた


。これはアッラーがかれらを損なったのではない。かれらが,自分を損なったのである。


41.アッラーを差し置いて外の主人を取る者を譬えれば,(自分で自分の)家を造る蜘蛛のよう


なものである。本当に家の中でも最も弱いのは,蜘蛛の家である。かれらに分っていたならば,


よかったのに。


42.本当にアッラーは,かれを差し置いてかれらが祈る,凡てのことを知っておられる。かれは


偉力ならびなく英明であられる。


43.これらは,われが人間のために提示する譬えである。だが知識ある者の外は,これを理解し


ない。


44.アッラーは諸天と大地を真理によって創造なされた。本当にその中には信仰する者への印が


ある。


45.あなたに啓示された啓典を読誦し,礼拝の務めを守れ。本当に礼拝は,(人を)醜行と悪事


から遠ざける。なお最も大事なことは,アッラーを唱念〔ズィクル〕することである。アッラー


はあなたがたの行うことを知っておられる。


46.また啓典の民と議論するさいには,立派な


(態度で)臨め。かれらの中不義を行う者にたいしては別である。それで言ってやるがいい。「


わたしたちは,自分たちに下されたものを信じ,あなたがたに下されたものを信じる。わたした


ちの神(アッラー)とあなたがたの神(アッラー)


は同じである。わたしたちはかれに服従,帰依するのである。」


47.われはこのように,あなたに啓典を下したのである。それで,啓典を与えられている者は,


この(クルアーン)を信じる。またこれら(マッカの人びと)の中にも,それを信じる者がある


。わが印を否定するのは不信心者だけである。


48.あなたはそれ(が下る)以前は,どんな啓典も読まなかった。またあなたの右手でそれを書


き写しもしなかった。そうであったから,虚偽に従う者は疑いを抱いたであろう。


49.いやこれこそは,知識を与えられた者の胸の中にある明瞭な印である。不義の徒の外は,わ


が印を否定しない。


50.だがかれらは,「何故主から印が,かれに下されないのか。」と言う。言ってやるがいい。


「本当に凡ての印は,アッラーの御許にある。わたしは公明な警告者に過ぎないのである。」


51.われがあなたに啓典を下し,あなたはかれらに読誦する。かれらにはそれで十分ではないか


。本当にその中には,信仰する者への慈悲と訓戒がある。


253


52.言ってやるがいい。「アッラーは,わたしとあなたがたとの間の,立証者として万全であら


れる。かれは天と地にあるものを知っておられる。だから虚偽を信じてアッラーに背く者は失敗


する者であろう。」


53.かれらは懲罰を急ぐよう,あなたに求める。もし定められた期限がなかったならば,懲罰は


必ずかれらに来るであろう。かれらが気付かない中に,突然必ず襲うであろう。


54.かれらは懲罰を急ぐよう,あなたに求める。だが地獄は不信心者たちを取り囲んでいる。


55.懲罰は,かれらの上からまた足元からかれらを襲う。その日(声があって)言われよう。「


あなたの行ったことを味わえ。」


56.信仰するわれのしもべよ,本当にわが大地は,広いのである。だからわれだけに仕えなさい





57.各人は死を味わわなければならない。それからあなたがたはわれの許に帰されるのである。


58.だが信仰して,正しい行いに勤しむ者は,われは必ず下に川が流れている楽園の高殿に,落


ち着かせよう。(永遠に)そこに住まわせる。(善)行を行う者への報奨は,何と有り難いこと


よ。


59.これはよく耐え忍び,自分の主を信頼している者(への報奨である)。


60.自分の糧を確保出来ないものが如何に多いことであろうか。アッラー(こそ)はそれらとあ


なたがたを養われる。かれは全聴にして全知であられる。


61.もしあなたがかれらに,「誰が天と地を創造し,太陽と月を服従させるか。」と問うならば


,かれらは必ず「アッラー。」と言うであろう。それならどうしてかれらは迷い去るのか。


62.アッラーは,御自分のしもべの中,御好・の者には糧を豊かに与え,また(そう望まれる)


者には切り詰められる。本当にアッラーは,凡てのことを熟知なされる。


63.もしあなたが,かれらに「誰が天から雨を降らせ,それで,死んでいる大地を甦らせるのか


。」と,問うならば,かれらはきっと「アッラー。」と言うであろう。言え,「アッラーを讃え


ます」。だがかれらの多くは理解しない。


64.現世の生活は,遊びや戯れに過ぎない。だが来世こそは,真実の生活である。もしかれらに


分っていたならば。


65.かれらは船に乗っていると,アッラーに信心の誠を尽くして祈る。だがかれが,陸に無事に


送って下さると,たちまちかれらは偶像を拝・だし,


66.われがかれらに授けたものを,有り難く思わず,享楽に耽る。だがかれらは,今に分るであ


ろう。


67.かれらは,われが安全な聖域を定めたのに気付かないのか。まわりでは人びとが略奪に晒さ


れているというのに。それでもかれらは虚構を信じ,アッラーの恩恵に背を向けるのか。


254


68.アッラーに対し虚偽を捏造し,真理が(お?)されたのに,それを虚偽であるとする者よりも,


酷い不義者があろうか。地獄の中には,不信心者たちの住・かがないとでも思うのか。


69.だがわれ(の道)のために奮闘努力〔ジハード〕する者は,必ずわが道に導くであろう。本


当にアッラーは善い行いの者と共におられる。



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