SURA 12.ユースフ章
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.アリフ・ラーム・ラー。これらは明瞭な啓典の印である。
2.われは,アラビア語のクルアーンを下した。恐らくあなたがたは悟るであろう。
3.われはこのクルアーンをあなたに啓示し,物語の中の最も美しいものを語ろう。あなたもこれ
まで気付かずにいたものである。
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4.ユースフがその父(ヤアコーブ)にこう言った時を思え。「父よ,わたしは(夢で)11の星と
太陽と月を見ました。わたしは,それらが(皆)わたしに,サジダしているのを見ました。」
5.かれは言った。「息子よ,あなたの夢を兄たちに話してはならない。さもないとかれらはあな
たに対して策謀を企らむであろう。本当に悪魔は人間には公然の敵である。
6.このように主は,あなたを御選びになって,出来事の解釈を教えられ,かれが以前に,あなた
の祖先のイブラーヒームやイスハークに御恵・を全うされたように,あなたとヤアコーブの子孫
にそれを全うしたものである。本当にあなたの主は全知にして英明であられる。」
7.本当にユースフとその兄弟(の物語の中)には,(真理を)探求する者への種々の印がある。
8.かれら(兄たち)がこう言った時を思え。「ユースフとその弟は,わたしたちよりも父に寵愛
されている。だがわたしたちは多勢の仲間である。父は明らかに間違っている。」
9.(1人が言った。)「ユースフを殺すか,それともかれを何処か外の地に追え。そうすれば父
の顔(好意)はあなたがたに向けられよう。その後に,あなたがたは正しい者になれるというも
のである。」
10.かれらの1人の者が言った。「ユースフを殺害してはならない,もしあなたがたがどうしても
そうしたいなら,寧ろかれを井戸の底に投げ込めば,恐らく何処かの隊商に拾い上げられること
もあろう。」
11.かれらは言った。「父よ,何故あなたはユースフを,わたしたちに御任せにならないのです
か,わたしたちは,本当にかれに好意を寄せているではありませんか。」
12.「明日わたしたちと一緒にかれを(野に)行かせ,遊んで気を晴らせるようにしてやって下
さい。わたしたちはかれを必ず守ります。」
13.かれ(ヤアコーブ)は言った。「あなたがたがかれを連れて行くのは,わたしにはどうも心
配である。あなたがたがかれに気を付けない間に,狼がかれを食いはしないかと恐れている。」
14.かれらは言った。「わたしたちは多勢の仲間だから,もし狼がかれを食うようなら,その時
はわたしたちは本当におしまいです。」
15.こうしてかれらは,かれ(ユースフ)を連れて行った。そしてかれを井戸の底に投げ込むこ
とに決めた時,われはかれ(ユースフ)に啓示した。「あなたは必ずかれらの(する)この事を
,かれらに告げ知らせる(日が)あろう。その時かれらは(あなたに)気付くまい。」
16.日が暮れてかれらは,泣きながら父の許に(帰って)来た。
17.かれらは言った。「父よ,わたしたちは栗いに競争して行き,ユースフをわたしたちの品物
のかたわらに残して置いたところ,狼がi来て)かれを食いました。わたしたちは真実を報告し
ても,あなたはわたしたちを信じては下さらないでしょう。」
18.かれらは,かれ(ユースフ)の下着を偽りの血で(汚し)持って来た。かれ(ヤアコーブ)
は言った。「いや,いや,あなたがたが自分たちのために(大変なことを安易に考えて),こん
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なことにしたのである。それで(わたしとしては)耐え忍ぶのが美徳だ。あなたがたの述べるこ
とに就いては,(只)アッラーに御助けを御願いする。」
19.そのうちに,隊商がやって来て水扱人を遺わし,かれは釣瓶を降ろした。かれは言った。「
ああ吉報だ,これは少年だ。」そこでかれらは一つの売物にしようとしてかれを隠した。だがア
ッラーは,かれらの凡ての行いを熟知される。
20.かれらは僅かの銀迂でただ同然にかれを売り払った。かれらは,かれから多くを貪らなかっ
た。
21.かれを買ったエジプトの者は,その妻に言った。「優しくかれを待遇しなさい。多分かれは
わたしたちを益することになろう。それとも養子に取り立ててもよい。」こうしてわれはユース
フをこの国に落ち着かせ,出来事(事象)の意味のとり方をかれに教えることにした。凡そアッ
ラーは御自分の思うところに十分な力を御持ちになられる。だが人びとの多くは知らない。
22.かれが成年に達した頃,われは識見と知識とをかれに授けた。このようにわれは正しい行い
をする者に報いる。
23.かれの起居する家の夫人が,かれの心を惑わそうとして,戸を閉めて言った。「さあ,あな
たおいでなさい。」かれは(祈って)言った。「アッラーよ,わたしを御守り下さい。本当にか
れ(あなたの夫)は,主人です。わたしを気持よく住ませてくれます。本当に不義の徒は,成功
いたしません。」
24.確かにかの女は,かれに求めたのである。主の明証を見なかったならば,かれもかの女を求
めたであろう。このようにしてわれは,かれから罪悪と醜行を遠ざけた。本当にかれは,謙虚で
純真な(選ばれた)わがしもベの一人である。
25.その時両人は戸の方で相競い,かの女は後ろからかれの服を引き裂き,かれら両人は,戸口
でかの女の夫に出会った。かの女は言った。「あなたの家族(妻)に悪事を行おうとした者には
,投獄か痛ましい懲罰の外にどんな応報がありましょう。」
26.かれは言った。「奥様こそ,わたしの意に反して,わたしを御求めになりました。」その時
かの女の家族の中の一人が証言した。「もしかれの服が前から裂けていれば,奥様が真実で,か
れは嘘つきです。
27.だがかれの服が,もし後ろから裂けていれば,奥さまが嘘を御付きになったので,かれは真
実であります。」
28.主人は,ユースフの服が後ろから裂かれているのを見て,言った。「これはあなたがた(婦
人)の悪企・だ。本当にあなたがたの悪企・は,激しいものである。
29.ユースフよ,これを気にしないでくれ。それから(妻よ),あなたの罪の赦しを願いなさい
。本当にあなたは罪深い者である。」
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30.町の婦人たちは(評判して)言った。「貴人の奥様が,青年の意に反し,誘惑したそうよ。
きっと恋に狂ったのでしょう。わたしたちは,明らかに奥様の誤りだと思います。」
31.かの女は婦人たちの悪意のある(陰ロ)を聞くと,使いを遣わし,かの女たちのために宴席
を蝕け,一人一人にナイフを渡し,それから(ユースフに),「かの女たちの前に出て行きなさ
い。」と言った。かの女たちがかれ(ユースフ)を見ると驚歎し,(興奮して)その手を傷つけ
て言った。「アッラーの(造化の)完全無欠なことよ,これは人間ではない。これは貴い天使で
なくて何でしょう。」
32.かの女は言った。「この人よ,あなたがたがわたしを謗るのは。確かにわたしが引っ張って
かれに求めたの。でもかれは貞節を守ったのよ。でも(今度)もしかれがあたしの命令を守らな
いなら,きっと投獄されて,汚名を被るでしょう。」
33.かれ(ユースフ)は言った。「主よ,わたしはかの女たちが誘惑するものよりも,牢獄が向
いています。あなたがもしかの女たちの悪企・を,わたしから取り除いて下さらなければ,わた
しは(若年の弱さで)かの女たちに傾いて,無道な者になるでしょう。」
34.それで主はかれ(の祈り)を受け入れ,かの女たちの悪企・をかれから取り払われた。本当
にかれは全聴にして全知であられる。
35.そこでかの女たちは(かれが潔白であるj証拠を見ていながら,しばらくかれを投獄しよう(
それがかの女たちのために良い)と思った。
36.その時2人の若者が,かれと共に下獄した。その1人が言った。「わたしは酒を絞るのを(夢
に)見ました。」また外の者は言った。「わたしは(夢に)自分の頭の上にパンを乗せて運んで
いると,鳥がそれを啄むのを見ました。わたしたちにその意味を解いて下さい。御見かけしたと
ころ,あなたは善い行いをされる方です。」
37.かれ(ユースフ)は答えて言った。「あなたがた2人に支給される食事が来る前に,わたしは
必ずその解釈を告げよう。それはわたしの主が教えて下さるのである。わたしはアッラーを信じ
ず,また来世を認めない不信心者たちの信条を捨てたのである。
38.そしてわたしは祖先,イブラーヒーム,イスハークまたヤアコーブの信条に従う。わたした
ちは,アッラーにどんな同位者も決して配すべきではない。これはわたしたち,また凡ての人び
とに与えられたアッラーの恩恵である。だが人びとの多くはこれに感謝しない。
39.2人の獄の友よ(わたしはあなたがたに尋ねる)。雑多の神々がよいのか,それとも唯一にし
て全能であられるアッラーなのか。
40.かれに仕えないならば,あなたがたとその祖先が命名した,(只の)名称に仕えるに過ぎな
い。アッラーはそれに対し権能を与えてはいない。大権はアッラーにだけ属し,あなたがたはか
れ以外の何ものにも仕えてはならないと(アッラーは)命じている。これこそ正しい教えである
。だが人びとの多くは知らない。
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41.2人の獄の友よ,あなたがたの中1人に就いていえば,主人のために酒を注ぐであろう。また
外の1人に就いては,十字架にかけられて,鳥がその頭から啄むであろう。あなたがた2人が尋ね
たことは,こう判断される。」
42.そして2人の中,釈放されると思われる者に言った。「あなたの主人にわたしのことを告げな
さい。」だが悪魔は,かれがかれ(ユースフ)のことをその主人に告げるのを忘れさせた。それ
でかれは,なお数年間獄中に留まった。
43.(ェジプトの)王が言った。「わたしは7頭の肥えた牛が,7頭の療た牛に食われているのを
(夢に)見ました。また穀物の7穂が緑で,他(の7穂)が枯れているのを見ました。首長たちよ
,あなたがたが夢を解け得るならば,このわたしの夢を解釈して下さい。」
44.かれらは(答えて)言った。「複雑な夢です。わたしたちは夢の解釈は不得手です。」
45.ところが2人の中の(獄から)釈放された者が,時を経て思い出して言った。「わたしがその
解釈をあなたかたに知らせましょう。それで(まず)わたしを行かせて下さい。」
46.(かれは牢獄に来て言った。)「ユースフよ,誠実な人よ,わたしたちに解いて下さい。7頭
の肥えた牛を,7頭の療た牛が食べ,また7つの緑の穀物の穂と,外の(7つの)枯れたものと(
の夢)を。わたしは人びとの処に帰って,かれらに理解させたい。」
47.かれは言った。「あなたがたは7年の間,例年のように種を播きなさい。だが刈り取ったもの
は,あなたがたが食べるのに必要な少量を除いて,(残りを)籾のまま貯蔵しなさい。
48.それから,その後7年(にわたる)厳しい(年)が来て,あなたがたがかれらのため以前に貯
蔵したものを食べ,貯えるものの少量(を残す)に過ぎないであろう。
49.それからその後に来る1年には,人びとに豊かな雨があり,たっぷり(果汁を)萎るであろう
。」
50.王は(命じて)言った。「かれをわたしの所に連れて来なさい。」それで使いがユースフの
所に来た時,かれは言った。「あなたは引き返して,あの手を傷つけた婦人たち(の心境)はど
うなっているのか,主人に尋ねなさい。わたしの主は,かの女たちの悪企・を知っておられる。
」
51.かれ(王)は,(婦人たちに)言った。「あなたがたがユースフを誘惑した時,結局どうで
あったのか。」かの女たちは,「アッラーは完全無欠であられます。かれ(ユースフ)には,何
の悪いこともないのを存じています。」と言った。貴人の妻は言った。「今,真実が(皆に)明
らかになりました。かれを誘惑したのはわたしです。本当にかれは誠実(高潔)な人物です。」
52.かれ(ユースフ)は言った。「これはかれ(主人)に,かれの不巧中わたしが決して裏切ら
ないことを知らせ,またアッラーが裏切り者の悪企・を決して御助けになられないことを知らせ
るためです。
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53.またわたし自身,無欠とはいえませんが,主が慈悲をかけた以外の(人間の)魂は悪に傾き
やすいのです。本当にわたしの主は寛容にして慈悲深くあられます」
54.(これらの報告を聞いて)王は言った。「かれをわたしの許に連れて参れ。わたしは側近と
してかれを引き立てよう。」そこでかれ(王)は,かれ(ユースフ)と話を交した後,言った。
「今日あなたは,確かにわたしの側近である。高位につけられ,信頼されているのである。」
55.かれ(ユースフ)は言った。「わたしをこの国の財庫(の管理者)に任命して下さい。わた
しは本当に知識ある管財者です。」
56.こぅしてわれは,この国においてユースフに権力を授けた。それでかれは,意のままにエジ
プトの国中を何時でも何処にでも住むことが出来た。われは欲する者に慈悲を施す。また善行を
なす者への報奨を虚しくしない。
57.信仰して,絶えず主を畏れる者には,来世における報奨こそ最も優れたものである。
58.その中ユースフの兄たちが来て,かれの前に罷り出た。かれ(ユースフ)はかれらを認めた
が,かれら(兄たち)の方はかれに気付かなかった。
59.かれは食料をかれらに与えてから言った。「あなたがたと同じ父親の,兄弟を1人わたしのも
とに連れて来なさい。あなたがたは,わたしが十分に計量したのを見なかったのか。それはわた
しの最上の持て成しではないか。
60.もしあなたがたがかれを連れて来ないなら,あなたがたはわたしの所で(殻物を)計っても
らえず,わたしに近付くことも出来ない。」
61.かれらは言った。「かれ(弟)に就いて父を納得させ,必ずそれを実行いたしましょう。」
62.それからかれ(ユースフ)は,その部下に(命じて)言った。「かれらの(穀物と交換して
払った)代価をかれらの袋に入れて置け。かれらは家に帰りそれを見て,恐らく戻って来るであ
ろう。」
63.かれらは父のところに帰って言った。「父よ,わたしたちは(穀物を)計ることを拒否され
ました。弟をわたしたちと一緒に行かせて下さい。そうすれば計って貰えます。わたしたちは(
どんな危険があっても)必ずかれを守ります。」
64.かれ(ヤアコーブ)は言った。「わたしは以前にかれの兄(ユースフ)に就いてあなたがた
を信用した以上に,かれに就いてあなたがたを信用出来ようか。だがアッラーは最も能く(かれ
を)守られる。かれこそは,慈悲深い御方の中でも最大の慈悲深い御方であられる。」
65.かれらが荷物を開くと,代価がかれらに返されているのを見付けた。かれらは言った。「父
よ,わたしたちは(この上)何を望・ましょう。この代価がわたしたちに戻されています。家族
に(もっと)蓄えが貰えます。弟を守り,ラクダ1頭分の増配を得(て帰)るでしょう。そのく
らいは,難なく手に入るでしょう。」
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66.かれは言った。「あなたがたが,避け難い障害に取り囲まれた場合の外必ずかれを連れて戻
ると,アッラーにかけて約束しない限り,わたしはかれをあなたがたと一緒に決してやらないで
あろう。」こうしてかれらがかれに厳粛に誓った時,かれは言った。「アッラーは,わたしたち
の言ったことの監視者であられる。」
67.更にかれは言った。「息子たちよ,(町に入る時は皆が)1つの門から入ってはならない。あ
なたがたは別々の門から入りなさい。だが(この用心は),アッラーに対しては,あなたがたに
何も役立たないであろう。裁定は,只アッラーに属する。かれにわたしは信頼した。凡ての頼る
者は,かれにこそ頼るべきである。」
68.かれらは父の命じたやり方で入った。それは,アッラー(の計画)に対し,何の役にも立た
なかった。只ヤアコーブ自身に必要な気休めに過ぎなかった。かれはわれが教えたので,知識を
持っていた。だが人びとの多くは知らない。
69.さてかれらがユースフの許に行った時,かれはその弟を規しく迎えて言った。「わたしはあ
なたの兄です。今までかれら(兄たち)がしてきたことに,心を悩ましてはならない。」
70.かれ(ユースフ)が,かれらに配給をし終った時,かれは弟の袋の中に盃を入れた。やがて
,ある者が呼びかけた。「隊商よ,あなたがたは確かに泥棒です。」
71.かれらは振り向いて言った。「あなたがたの何がなくなりましたか。」
72.かれらは言った。「わたしたちは,王様の盃をなくしたのです。それを持って・ス者にはラク
ダの一頭分の荷(を与える)でしょう。わたしがその保証人です。」
73.かれらは言った。「アッラーにかけて誓います。わたしたちはこの国で,悪事を働く為に来
たのではないことを,あなたがたは既に御存じです。わたしたちは,盗・は致しません。」
74.かれらは言った。「あなたがたが嘘つきであったら,その(盗・の)処罰は何としようか。
」
75.かれら(兄たちは答えて)言った。「その処罰は,誰でも袋の中から(盃が)発見された者
であります。かれが,その償いです。このように,わたしたちは悪を行う者を罰します。」
76.それでかれ(ユースフ)は,弟の袋(の検査)をする前に,かれらの袋を(調べ)始めた。
そして(最後に)弟の袋から,それを捜し出した。われはこのように,ユースフに策略を授けた
。アッラーが望まれる以外には,かれは弟を(エジプト国)王の法律の下で抑留することが出来
なかったのである。われは欲する者の(英知の)階位を高める。だが全知者(アッラー)はいる
。
77.かれらは言った。「もしかれが盗んだとすれば,かれの兄も以前確かに盗・をしました。」
しかしユースフはこれらのことを自分の心に秘めて,かれらにそれ(秘密)を漏さなかった。か
れは(独り言のように)言った。「事情はあなたがたに不利である。アッラーはあなたがたの語
る真実を最も能く知っておられる。」
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78.かれらは言った。「申し上げますが,かれには大変年老いた父親があります。それでかれの
代りに,わたしたちの1人を拘留して下さい。御見うけしたところ,あなたは本当に善い行いを
なさる方でございます。」
79.かれは言った。「アッラーは,わたしたちの物を,その許で見付けた者以外は,(誰も)捕
えることを禁じられる。(もしそうしないと)本当にわたしたちは,不義を行うことになるであ
ろう。」
80.そこでかれらは,かれ(の引き取り)に望・がないことを知り,密に協議した。かれらの中
の最年長の者が言った。「あなたがたは,父がアッラー(の御名)によって誓いをたて,また以
前ユースフのことに就いても,どのような誤りを犯したかを考えないのか。それで父がわたしを
許すか,またアッラーがわたしたちを御裁き下さるまで,わたしは決してこの地を離れないであ
ろう。かれは最も優れた裁決者であられる。
81.あなたがたは父のもとに帰って言いなさい。『父よ,あなたの子は,本当に盗・をしました
。わたしたちは,唯知っていることの外は証明出来ません。また目に見ていないことに対しては
,どうしようもなかったのです。
82.それで(あなたは),わたしたちがいた町て尋ねるか,またはそこを往来した隊商に問いな
さい。わたしたちは真実を言っている(ことが分ります)』。」
83.かれ(ヤアコーブ)は言った。「いや嘘である。あなたがた自身のため事件を工夫して作っ
たに過ぎない。だが耐え忍ぶこそ(わたしには)美徳である。或はアッラーが,かれらを皆わた
しに御送りになるかもしれない。かれは本当に全知にして英明であられる。」
84.かれはかれらから離れて言った。「ああ,わたしはユースフのことを思うと,悲しくてなら
ない。」かれ(父)の両目は悲嘆の余り自くなり,物思いに沈んだ。
85.かれらは言った。「アッラーにかけて申し上げます。あなたはユースフを思うことを止めな
ければ,重態に陥,或は死んでしまいます。」
86.かれは言った。「わたしは只アッラーに対し,わが悲嘆と苦悩とを訴えている丈である。わ
たしは,あなたがたが知らないことを,アッラーから教わっている。
87.息子たちよ,あなたがたは出掛けてユースフとその弟の消息を尋ねなさい。アッラーの情け
深い御恵・に決して絶望してはならない。不信心な者の外は,アッラーの情け深い御恵・に絶望
しない。」
88.それでかれらは,(また)かれ(ユースフ)の許にやって来て言った。「申し上げます。災
難(機(鐘?))がわたしたちと一族の者に降りかかったので,ほんの粗末な品を持って参いり
ました。(桝?)目を十分にして,わたしたちに施して下さい。本当にアッラーは施しを与える
者を報われます。」
89.かれは言った。「あなたがたが無道の余り,ユースフとその弟にどんなことをしたか知って
いるのか。」
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90.かれらは驚いて言った。「すると本当にあなたは,ユースフなのですか。」かれは言った。
「わたしはユースフです。これはわたしの弟です。アッラーは確かにわたしたちに恵・深くあら
れる。本当に主を畏れ,堅忍であるならば,アッラーは決して善行の徒への報奨を,虚しくなさ
れない。」
91.かれらは言った。「アッラーにかけて。本当にアッラーはわたしたちの上に,あなたを御引
き立てなされた。わたしたちは本当に罪深い者です。」
92.かれは言った。「今日あなたがたを,(取り立てて)咎めることはありません。アッラーは
あなたがたを御赦しになるでしょう。かれは慈悲深き御方の中でも最も優れた慈悲深き御方であ
られます。
93.あなたがたはわたしのこの下着を持って(帰り),わたしの父の顔に投げかけなさい。かれ
は眼が見えるようになろう。それからあなたがたは,家族揃ってわたしの処に来なさい。」
94.隊商が(エジプトを)たった時,かれらの父は(左右の者に)言った。「わたしは確かにユ
ースフの匂を嗅いだ。だがあなたがたは,老衰のせいだと思うであろう」
95.かれらは言った。「アッラーにかけて,全くそれはあなたの(いつもの)老いの迷いです。
」
96.それから吉報を伝える者が(帰って)来て,(下着を)かれの顔に投げかけると,直かれは
視力を回復した。かれは言った。「わたしはあなたがたに言わなかったか。あなたがたが知らな
いことを,わたしはアッラーから(の啓示で)知っている。」
97.かれらは言った。「父よ,わたしたちのために,罪の御放しを祈って下さい。わたしたちは
本当に罪深い者でした。」
98.かれは言った。「それではわたしはあなたがたのため,わが主に御放しを願ってやろう。本
当にかれは,寛容で慈悲深くあられる。」
99.やがてかれらがユースフの許に来た時,かれは両親を親しく迎えて言った。「もしアッラー
が御望・なら,安らかにエジプトに御入りなさい。」
100.かれは両親を高座に上らせた。すると一同はかれにひれ伏した。するとかれは言った。「わ
たしの父よ,これが往年のわたしの夢の解釈です。わが主は,それを真実になさいました。本当
にかれは,わたしに恩寵を与え,年獄からわたしを御出しになり,また悪魔が,わたしと兄弟と
の間に微妙な敵意をかきたてた後,砂漠からあなたがたを連れて来られたのであります。わが主
は,御望・の者には情け深くあられます。本当にかれは全知にして英明であられます。
101.主よ,あなたはわたしに権能を授けられ,また出来事の解釈を御教えになりました。天と地
の創造の主よ,あなたは現世と来世でのわたしの守護者です。あなたは,わたしをムスリムとし
て死なせ,正義の徒の中に加えて下さい。」
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102.これはわれがあなた(ムハンマド)に啓示した,幽玄界の消息の一つである。かれらが(ユ
ースフに対する)計画を策謀した時,あなたはかれらと(その場に)いなかった。
103.仮令あなたが如何に望んでも,人びとの多くは信じないであろう。
104.あなたはそれ(使命)に対し,どんな報酬もかれらに求めない。これは,全人類への訓戒に
外ならない。
105.天と地の間には,(アッラーの唯一性や神慮に関し)如何にも多くの印がある。かれらはそ
の側を過ぎるのだが,それらから(顔を)背ける。
106.かれらの多くは,アッラーを多神の1つとしてしか信仰しない。
107.かれらに下るアッラーの懲罰が覆いかかることに対し,またかれらが気付かない間に突然来
る時に対し,かれらは安心出来るのか。
108.言ってやるがいい。「これこそわたしの道。わたしも,わたしに従う者たちも明瞭な証拠の
上に立って,アッラーに呼びかける。アッラーに讃えあれ。わたしたちは多神を信じる者ではな
い。」
109.われはあなた以前にも,町に住む者の中から(特に選んで),われが啓示を授けた人間以外
は,(預言者として)遺わさなかった。かれら(マッカの人びと)は,地上を旅して,以前の者
たちの最後が,どんな(悲惨な)ものであったかを観察しているではないか。本当に主を畏れる
者に対する,来世の住まいこそ最上である。あなたがたは悟らないのか。
110.(ムハンマド以前の)使徒たちが(遺わされた民のもとで)一切の希望を失った時,そして
かれら(使徒たち)が(不信仰者に対するアッラーからの勝利の約束の)期待が持てなくなった
と思い込んだ時,われの助けがかれら(使徒)に下り,われの欲する者に救いは来るのである。
只罪を犯した者は,わが懲罰は免れられない。
111.本当にかれらの物語の中には,思慮ある人びとへの教訓がある。これは作られた事柄ではな
く,以前にあったもの(啓典)の確証であり,凡ゆる事象の詳細な解明であり,また信仰する者
への導き,慈悲ともなる。
SURA 13.雷電章 〔アッ・ラアド〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.アリフ・ラーム・ミーム・ラー。これは啓典の印である。そしてそれは主から,あなたに啓示
された真理である。だが人びとの多くは信じない。
2.アッラーこそは,あなたがたには見える柱もなくて,諸天を掲げられた方である。それからか
れは,(大権の)御座に鎮座なされ,太陽や月を従わせられる。(だから)各々の定められた時
期まで運行する。かれが凡ての事物を規制統御し,種々の印を詳しく述べられる。必ずあなたが
たに主との会見に就いて確信させるためである。
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3.かれこそは大地を広げ,その上に山々や河川を配置された方である。またかれはそこで,凡て
の果実を2つ(雌雄)の対になされた。また夜でもって昼を覆わされる。本当にこの中には,反
省する人びとへの印がある。
4.また地上には,隣り合う(が相異った)地域がある。ブドウの園,殻物の畑,一つの根から出
た,またはそうでないナツメヤシの木,同じ水で灌漑されても,食物としてあるものを外のもの
よりも優れたものになさる。本当にこの中には,理性ある人びとにとって印があろ。
5.もしあなたが不思議に思うのなら,「わたしたちが(現実に)土になった時,わたしたちは本
当に新しく創造されるであろうか。」とかれらの言うことこそ不思議である。これらは主を信じ
ない者である。かれらはその首に枷がかけられる火獄の仲間で,その中に永遠に住む者である。
6.かれらは(多くの)見せしめの例がかれら以前にあるのにあなたに幸福よりも,寧ろ災厄を急
いで求める。しかしあなたの主は人間の悪い行いに対し本当に寛容であり,またあなたの主は,
懲罰にも本当に痛烈である。
7.信じない者たちは,「何故主からかれらに一つの印も下らないのだろうか。」と言う。あなた
は一人の警告者に過ぎない。各々の民には一人の導き手がある。
8.アッラーは各々の女性が,妊娠するのを知っておられ,またその子宮の(胎児の時が)直ぐ終
るか,また延びるかを知っておられる。凡てのことは,かれの御許で測られている。
9.かれは幽玄界も現象界も知っておられる方,偉大にして至高の方であられる。
10.あなたがたが言葉を隠しても,また声を出して言っても,あるいは夜間に隠れても,また昼
間公然と出かけても,(全知の主においては)同じことである。
11.各人には,前からも後ろからも,次から次に(天使)が付いていて,アッラーの御命令によ
り監視している。本当にアッラーは,人が自ら変えない限り,決して人びと(の運命)を変えら
れない。だがアッラーが(一度)人びとに災難を下そうと御望・になれば,それは決して避ける
ことは出来ない。かれらには,かれの外に守護者はないのである。
12.かれこそは稲妻を現わしてあなたがたに恐れと希望を抱かせられ,(雨を含む)重い雲を起
こさせられる方である。
13.雷はかれを譲えて唱念し,また天使たちもかれを畏れて唱念する。かれは雷鳴を送られ,か
れらがアッラーに就いて論争している間に,これでかれの御好・の者を撃たれる。かれは力ある
強烈な方である。
14.真実の祈りはかれに(だけ祈ることで)ある。かれの外にかれらが祈るものは,決してかれ
らに答えない。丁度両手を水に差し伸べて,それが自分のロに届く(のを望む)ようなもので,
それはかれに届かない。信仰がない者の祈りは,(心が)迷っている(ので無益なこと)に過ぎ
ない。
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15.天と地上で凡てのものは,好むと好まないとに拘らず,またかれらの影も,朝夕,アッラー
にサジダする。 〔サジダ〕
16.言ってやるがいい。「天と地の主は誰であるのか。」言ってやるがいい。「アッラーであら
れる。」言ってやるがいい。「あなたがたはかれの外に,自分自身にさえ益も害も(君?)せない
ものたちを保護者とするのか。」言ってやるがいい。「盲人と晴眼者は同じであるのか。また暗
黒と光明とは同じであるのか。かれらはアッラーが創造されたような創られたものを,かれと同
位に配する。それでかれらには創造の意味が疑わしくなったのか。」言ってやるがいい。「アッ
ラーは凡てのものの創造者であり,かれは唯一にして全能であられる。」
17.かれが天から雨を降らせられれば,その量に応じて谷を流れ,奔流は浮ぶ泡を乗せて運び去
る。また装飾品や道具を造るために(金属)を火にかけても,それと同じ(泡?)(が出来る)。
このようにアッラーは,真実と虚偽とを提示なされる。(泡?)は塵のように消え去る。だが人類
を益するものは,地上に残る。アッラーはこのように,種々の譬えで説き明かされる。
18.かれらの主に答える者には善賞があり,かれに答えない者には,かれらが天地の凡てのもの
を所有し,またはそれに倍するものをもち,罪を贖うために提供しても(無益である)。かれら
にとっては,悪い清算であろう。その住まいは地獄である。その臥床の何と悲惨なことよ。
19.主からあなたに下されたものが,真理であることを知る者と,(盲人が物を見られないよう
に)
物事を見られない者と同じ(ように報いられる)であろうか。心ある者だけが,訓戒を受け入れ
ることが出来る。
20.(即ち) アッラーの約束を全うし契約に違反しないで,
21.結ばれるようアッラーが命じられる者と一緒になり,主を畏敬し,(審判の日の)悪い清算
を恐れる者である。
22.また主の御顔を求めて耐え忍び,礼拝の務めを守り,われが糧のために与えたものの中から
,陰に陽に施し,また善によって悪を退けるような者は,(善)果の住まいを得る。
23.かれらは,その祖先と配偶者と子孫の中の善行に励む者と一緒に,アドン(エデン)の園に
入るであろう。そして天使たちも各々の門からかれらの許に入(ってこう挨拶す)るであろう。
24.「あなたがよく耐え忍んだ故に,あなたがたの上に平安あれ。まあ何と善美な終末の住まい
であることよ。」
25.だがアッラーに誓った後,その契約を破り,アッラーが結べと命じられる者と縁を切り,地
上で悪を行った者には呪いがあり,悪い住まいに入るであろう。
26.アッラーは御心に適う者に豊かに糧を与え,また乏しくも授けられる。(かれらは)
現世の生活を楽しむ。だが現世の生活は,来世では,(はかない)享楽に過ぎない。
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27.信じない者は言う。「何故主からの印が,かれ(ムハンマド)に下されないのですか。」言
ってやるがいい。「本当にアッラーは,御好・の者を迷うに任せ,梅悟してかれに返る者を導か
れる。
28.これらの信仰した者たちは,アッラーを唱念し,心の安らぎを得る。アッラーを唱念するこ
とにより,心の安らぎが得られないはずがないのである。」
29.信仰して,善行に励む者にとっては,至福〔トゥーバー〕がかれらのものであり,善美な所
が(究極の)帰り所である。
30.そこでわれは,以前に多くの民衆が滅び去った民の中に,あなたを遺わした。それはわれが
啓示によってあなたに下すものを,慈悲深き御方を未だ信じないでいるかれらに,読誦させるた
めである。言ってやるがいい。「かれはわたしの主であられ,かれの外には神はないのである。
かれにわたしの凡てを御委せし,かれこそあたしの拠り所である。」
31.仮令一部のクルアーンがあって,それにより山々が移動され,大地が裂かれ,または死者に
語らせることが出来ても,凡ての命令はアッラーに属すのである。アッラーの御心があれば,人
類を一斉に導かれることを,信仰する者たちは未だに納得していないのか。だが不信者たちはか
れらの(悪い)行いのために,アッラーの約束が実現するまで災厄がかれらの住まいとその付近
に絶えることなく付きまとう。本当にアッラーは決して約束を違えられない。
32.(多くの)使徒は,あなた以前に確かに嘲笑された。だがわれは不信心な者たちに猶予を与
え,それからかれらを捕えた。わが報復は如何であったのか。
33.かれは人間各人の行う凡てのことを,監察される御方ではないか。だがかれらはアッラーに
同位の者を配する。言ってやるがいい。「かれらの名を挙げよ。あなたがたは,かれが地上で知
っておられないものを,かれに告げようとするのか。それとも架空な語に過ぎないのか。」いや
そうではない。不信心な者は,かれらの策謀したものが立派に見えて,道から閉め出されたので
ある。アッラーに迷うに任せられた者には,誰も導き手はいない。
34.かれらに対しては,現世の生活でも罰が科せられる。だが来世の懲罰は更に厳しい。かれら
はアッラー(の御怒り)に対し,守護者もないのである。
35.主を畏れる者に約束される楽園に就いて言えば,川が下を流れ,常に果実が実り,日陰に覆
れている。これが,かれら主を畏れる者の結末である。だが不信者の結末は火獄である。
36.わが啓典を与えられた者たちは,あなたに啓示されたものを喜ぶ。だが氏族の中には,その
一部分を拒否する者がある。言ってやるがいい。「わたしはアッラーに仕え,何ものもかれに比
肩してはならないと命じられた。わたしはかれにだけ祈りを捧げ,またかれの御許に帰るのであ
る。」
37.このようにわれは,アラビア語で判断(の規範)を下した。知識があなたがたに下った後,
かれらの(虚しい)欲求に従うならば,あなたはアッラー(の怒り)に対して,援助者もなく守
護者もないであろう。
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38.われはあなた以前にも使徒たちを遣わし,妻と子孫をかれらに授けた。だがアッラーの御許
しがない限り,何の使徒も印を現わすことはなかった。各時代に,一つの啓典が(下されるので
)ある。
39.アッラーは,御好・のものを取り消し,または確認なされる。啓典の母体はかれの御許にあ
る。
40.われがかれらに約束したことの一部を,あなたに示しても,または(その完成前に)あなた
の魂をわれに召しても,あなたの任務は(啓示を)伝えることであり,清算はわれの行うことで
ある。
41.かれらは,われがこの地に来て,端々からそれを切り崩しているのを見ないのか。アッラー
の御裁き(ある時),それを妨げるものはない。かれは清算に迅速であられる。
42.かれら以前の者も(使徒に対して)策謀した。だが凡ての策謀はアッラーに属する。かれは
各人の行ったことを知っておられる。不信者は,終末の住いが誰のものであるかを間もなく知る
であろう。
43.信仰しない者は,「あなたは使徒ではない。」と言う。言ってやるがいい。「わたしとあな
たがたとの間の立証者として,アッラーと啓典の知識を持つ者がいれば十分である。」
SURA 14.イブラーヒーム章
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.アリフ・ラーム・ラー。われはあなたに,あなたが主の御許しによって,人びとを暗黒から光
明に,偉大な讃美すべき方の道に導き出すために啓典を下した。
2.天にありまた地にある凡ての有はかれに属する。厳しい懲罰を受ける不信心者にこそ災いあれ
。
3.かれらは来世よりも現世の生活を愛し,(人びとを)アッラーの道から妨げ,曲げようとする
ものである。これらは遠く迷い去った者である。
4.われはその民の言葉を使わないような使徒を遺わしたことはない。(それはその使命を)
かれらに明瞭に説くためである。それでアッラーは,御好・の者を迷うに任せ,また御好・の者
を導かれる。かれは,偉力ならびなく英明であられる。
5.且つてわれは,印を持たせてムーサーを遺わし,「自分の民を,暗黒から光明に導き出し,ア
ッラーの日々(諸民族の過去の出来事)をかれらに銘記させなさい。」と(命じた)。本当にこ
の中には,耐え忍んで感謝する凡ての者への印がある。
6.ムーサーがその民に言った時を思いなさい。「アッラーがあなたがたをフィルアウンの所から
救われた時あなたがたに施されたかれの恩恵を思いなさい。かれらはあなたがたを残酷な刑に会
わせ,あなたがたの男児を殺し,女児を生かしておいた。本当にその中には,主からの偉大な試
練があったのである。」
150
7.その時主は(ムーサーの口を通じて)宣告された。「もしあなたがたが感謝するなら,われは
必ずあなたがたに(対する恩恵を)増すであろう。だがもし恩恵を忘れるならば,わが懲罰は本
当に厳しいものである。」
8.ムーサーはまた言った。「仮令あなたがたが恩を忘れても,地上の者(が忘恩)でも,本当に
アッラーは,凡てが満ち足られている御方讃美すべき方である。」
9.あなたがた以前の者たち,ヌーフやアードやサムードの民の消息を,あなたがたは聞かなかっ
たのか。またかれらの後(に来た)者たちのことは,アッラー以外には誰も知らない。使徒たち
が明証を持ってかれらの所にやって来たが,かれらは手でかれら(預言者たち)の口を押えて,
言った。「わたしたちは,あなたがたが遺わされたことを信じません。またわたしたちを招く教
えに就いても,本当に不安な疑いを抱きます。」
10.使徒たちは言った。「あなたがたは天と地を創造された方,アッラーに就いて疑いがあるの
か。かれがあなたがたを招かれたのは,あなたがたの罪を御赦しなされ,定められた期限まで,
あなたがたを猶予なさるためである。」かれらは言った。「あなたがたは,わたしたちと同じ人
間に過ぎないのです。あなたがたは,祖先が仕えてきたものから,わたしたちを背かせようと望
んでいるのです。それなら(先ず真実を物語る奇跡で)わたしたちに明瞭な権威を現わしなさい
。」
11.使徒たちはかれらに言った。「勿論わたしたちは,あなたがたと同じ人間に過ぎない。だが
アッラーは,そのしもべの中御心に叶う者に御恵・を与えられる。アッラーの御許しがない限り
,あなたがたに一つの権威をも(宙?)さないのである。それで凡ての信心ある人びとは,アッラ
ーに全てを御任せしなさい。」
12.「どうしてわたしたちは,Aッラーを信頼しないでいられようか。かれはわたしたちを(従う
べき)道に導かれる。わたしたちは,あなたがたが加える迫害に何処までも耐え忍ぶであろう。
信頼する者たちは,アッラーにこそ全てを御任せすべきである。」
13.すると信じない者はかれらの使徒たちに言った。「わたしたちは,あなたがたを国土から必
ず追放するでしょう。さもなければ,わたしたちの教えに返りなさい。」そこで主は,かれら(
使徒)に啓示なされた。「われは不義の徒らを,必ず滅ぼし,
14.かれらの後,必ずあなたがたをこの国に住まわせるであろう。これらはわれが審判に立つの
を恐れる者,また(処罰の)約束を恐れる者のためである。」
15.かれらは裁定を望んだが,凡ての頑固な反逆者は望・を断たれてしまった。
16.かかる者の後ろは地獄であって,汚らわしい水を飲まされる。
17.かれはそれを飲・込もうとするが,なかなか飲・込めない。また死が凡ての方向から迫るが
,かれは死にもしない。尚かれの後ろには容赦のない懲罰がある。
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18.主を信じない者を例えれば,かれらの行いは丁度暴風が吹き荒ぶ大荒の日の灰のようなもの
である。努力した凡てのことは,かれらに何も役立つものはない。これは(真理の方向から)遠
く離れ去っている者である。
19.あなたがたはアッラーが,真理によって天地を創造されたことを考えないのか。もしかれの
御心ならば,あなたがたを追放して,(その地に)新しい創造物を(あなたがたの代りに)連れ
て来られよう。
20.それはアッラーにとっては,難しいことではない。
21.かれらの凡てがアッラーの御前に罷り出る。その時弱者たちは高慢であった者たちに向かっ
て言う。「わたしたちは(地上で)あなたがたに従っていた。だからあなたがたは,アッラーの
懲罰を,少しでも防いでくれないのですか。」かれらは(答えて)言う。「もしアッラーがわた
したちを御導きになったら,必ずあなたがたを(正しく)導いたであろう。(今)耐えても,騒
いでも,わたしたちにとっては同じことで免れられないのだ。」
22.凡ての事が,決定された時,悪魔は言った。「真実の約束を,あなたがたに約束されたのは
アッラーでした。わたしも約束したのですが,あなたがたの役には立たなかったのです。もとも
とわたしは,あなたがたに対し権威はないのです。只あなたがたに呼びかけ,あなたがたがわた
しに従っただけです。それでわたしを非難してはならないのです。寧ろ自分自身を責めなさい。
わたしはあなたがたを助けることは出来ないのです。あなたがたもわたしを助けられないのです
。実はあなたがたが,先にわたしを(アッラーと)同位に置いたが,わたしはそれを拒否してい
たのです。本当に不義の徒には痛ましい懲罰があるのです。」
23.信仰して善い行いに励む者は,かれらの主の御許しの許に,川が下を流れる楽園に入り,永
遠にその中に住むことになる。そこでかれらの受ける挨拶は,「平安あれ。」であろう。
24.あなたはアッラーが如向に善い御言葉に就いて比(輪?)を上げられているかを考えないのか。
それは良い木のようなもので,その根は固く安定し,その幹は天に(聳え),
25.(それは)主の命により凡ての季節に実を結ぶ。アッラーは人びとのために比(輪?)を上げら
れる。それはかれらに反省させるためである。
26.悪い言葉を譬えれば,悪い木のようなもので,地面から根が抜けて,それに安定性がない。
27.アッラーは現世の生活においてもまた来世でも,堅固な(地歩に立つ)御言葉で,信仰する
者たちを立たせられる。だがアッラーは悪を行う者を迷うに任せ,かれは御心のままになされる
。
28.あなたがたは,アッラーの恩恵を冒(演?)に換え,自分たちの民を破滅の住・家に落し入れた
者を見ないのか。
29.地獄(に陥り),かれらはその中で焼かれるであろう。(何と)悪い落ち着き場所であるこ
とよ。
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30.かれらは(人びとを)主の道から背かせるために,アッラーに同位者を配した。言ってやる
がいい。「楽し・なさい(はかないこの世の生活を)。本当にあなたがたの道行きの果ては火獄
である。」
31.信仰するわれのしもべたちに告げなさい。「礼拝の務めを守り,取引も友情も果たせない日
が来る前に,われが授けたものから,密かにまた公に施しなさい。」
32.アッラーこそは,天と地を創 され,天から雨を降らせ,これによって果実を実らせられ,あ
なたがたのために御恵・になられる方である。また船をあなたがたに操縦させ,かれの命令によ
って海上を航行させられる。また川をあなたがたの用に服させられる。
33.またかれは,太陽と月をあなたがたに役立たせ,両者は飽きることなく(軌道)を廻り,ま
た夜と昼をあなたがたの用に役立たせられる。
34.またかれはあなたがたが求める,凡てのものを授けられる。仮令アッラーの恩恵を数えあげ
ても,あなたがたはそれを数えられないであろう。人間は,本当に不義であり,忘恩の徒である
。
35.イブラーヒームが(こう祈って)言った時を思え。「主よ,この町を安泰にして下さい。ま
たわたしと子孫を偶像崇拝から遠ざけて下さい。
36.主よ,かれらは人びとの多くを迷わせました。わたし(の道)に従う者は,本当にわたしの
身内であります。わたしに従わない者は……だがあなたは度々御許しなされる方,慈悲深い方で
あられます。
37.主よ,わたしは子孫のある者をあなたの聖なる館の側の耕せない谷間に住まわせました。主
よ,かれらに礼拝の務めを守らせて下さい。そうすれば人びとの心をかれらに引き付けるでしょ
う。またかれらに果実を御授け下さい。きっとかれらは感謝するでしょう。
38.主よ,本当にあなたは,わたしたちが隠すことも現わすことも知っておられます。また地に
も天にも,アッラーに対し何も隠されたものはありません。
39.老年なのに,わたしにイスマーイールとイスハークを授けられた方,アッラーを讃えます。
本当にわたしの主は,祈りを御聞き届け下さる方です。
40.主よ,わたしとわたしの子孫たちを,礼拝の務めを守る者にして下さい。主よ,わたしの祈
りを御受け下さい。
41.主よ,清算が確定する日には,わたしと両親そして(凡ての)信者たちを,御赦し下さい。
」
42.不義を行う者を,アッラーは疎かになされると考えてはならない。かれは(恐れのために)
目が坐る日まで,かれらに猶予を与えられるだけである。
43.(その日) かれらは首を上げて前の方に走って行き,
目は坐わって自分に戻らず,心は空ろである。
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44.それで懲罰がかれらに下る日を,人びとに警告しなさい。その時不義の徒は言うであろう。
「主よ,短い期間の御猶子を願います。わたしたちはあなたの呼び掛けに答えて,使徒に従いま
す。」(主は答えて仰せられよう)。「何と,以前あなたがたは,衰退する(ような)ことはな
いのだと,誓っていたではないか。
45.あなたがたは,自らの魂を損っていた人びとの住まい(の跡)に住・,われは如何にかれら
を処分したかをあなたがたに明らかにし,またあなたがたのために(多くの)例を述べたのであ
る。」
46.かれらは確かに策謀を企んだ。仮令かれらの策謀がそれによって山を移す程のものであって
も,かれらが策謀したのはアッラーの御手の中であった。
47.だからアッラーが,かれの使徒たちとの約束を破られたと考えてはならない。本当にアッラ
ーは偉力ならびなき報復の主である。
48.大地が大地ではないものに変えられ,諸天も変えられる日,(人びとは一斉に)唯一の方,
全知,全能の御方,アッラー(の御前)に罷り出るであろう。
49.その日あなたは,罪のある者たちが鎖で一緒に繋がれているのを見るであろう。
50.かれらの下着はタールで,かれらの顔は火で覆われる。
51.アッラーは各人がそれぞれに行ったことに報われる。本当にアッラーは清算に迅速である。
52.これは,人びとに対する伝言で,これによってかれらは警告され,かれが唯―の神であられ
ることを知らされ,同時に思慮ある者たちが戒められる。