巡礼の形式の種類
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⑤巡礼の形式の種類
● 巡礼の形式には 3種類‐タマットゥとキラーンとイフラード‐があります:
1-タマットゥ(ウムラを終えてからハッジに移行する巡礼形式)の形:ハッジの期間中
にウムラのためのイフラーム1をし、それを完遂します。そして同年にマッカ、あるいはそ
の近郊からハッジのためのイフラームに入り、イードの日(ズー・アル=ヒッジャ月2の10
日)アル=アカバのジャムラ3への投石を済ませるまでその状態のまま留まります。この巡
礼形式には犠牲が課せられます。最初のイフラームに入る時には、「タマットゥ(享受)し
つつハッジへと移行させるウムラのために、あなたの御許に馳せ参じます」4と唱えます。
2-キラーン(ハッジとウムラを同時進行する巡礼形式)の形:ウムラとハッジのための
イフラームを、同時に行います。あるいはハッジのためのイフラームを行い、その後にウ
ムラをそこに併合します。そしてイフラームに入る際には、「ウムラとハッジのためにあな
たの御許に馳せ参じます」と唱えます。またタワーフ5を行う前に月経や産後の出血などに
見舞われるなど正当な理由を有する者は、ハッジをウムラに併合することが許されていま
す。
3-イフラード(ハッジのみを行う巡礼形式)の形:ハッジのためのイフラームを単独で
行い、その際には「ハッジのためにあなたの御許に馳せ参じます」と唱えます。尚このイ
フラードとキラーンの巡礼形式の間には、キラーンにおいては犠牲を要求されるというこ
との他、何の違いもありません。一般的にキラーンはイフラードよりも優れており、タマ
ットゥはキラーンよりも優れているとされます。
● 最良の巡礼形式は?
ハッジをする者は、最良の巡礼形式と言われるタマットゥで行うべきでしょう。という
のもタマットゥこそは、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がハッジ
の際にその教友たちに命じたものなのであり、その「別れのハッジ」で犠牲を伴っていな
かった全ての者に行わせたものなのですから。またタマットゥは、最も簡単かつ行いの多
い巡礼形式でもあります。
1 訳者注:詳しくは「③イフラーム」の項を参照のこと。
2 訳者注:ヒジュラ暦12月のこと。
3 訳者注:「ジャムラ」とはマッカ近郊の巡礼者宿営地「ミナー」にある、大小中3本の投石塔。ヒジュ
ラ暦12月10日に最大の柱「アル=アカバ」に7個、そして11、12、13日には各柱に7個ずつの小石を
投石することになっています。
4 訳者注:「タマットゥ(享受)」という名称は、一旦ウムラをした後、ハッジの時期が来るまでイフラー
ムを解き、その間イフラームに伴う様々な禁止事項から縛られないでいる安楽を享受していられることに
由来します。
5 訳者注:「タワーフ」は巡礼(ハッジとウムラ)の諸義務行為の内の1つ。アッラーを崇拝するために
カアバ神殿の周囲を7回逆時計回りに廻ります。
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● キラーン、あるいはイフラードのイフラームに入った者は、例えタワーフやサアイ6を
終了してしまっていたとしても、犠牲を伴っていない限りその巡礼形式をタマットゥの
ためのウムラに変更してしまう方が良いでしょう。そのようにする場合、預言者(彼に
アッラーからの祝福と平安あれ)の命に従ってその後頭髪を剃るか切るかしてからイフ
ラームを解除します。一方犠牲を伴っている者はイフラームの状態のまま留まり、イー
ドの日に投石するまでそれを解除しません。
● マッカへの入り方:
ハッジにせよウムラにせよ、イフラームに入ったらタルビヤ7を唱えながらマッカを目指
します。そしてもし可能なら、マッカの高い場所から入り、グスル8することがスンナ9です。
ハラーム・モスクに入るのに決まった方角はありませんが、モスクには通常通り右足から
入ります。そして以下のような、モスクに入る時のドゥアー(祈り)を唱えます:
「アッラーよ、あなたのご慈悲の扉を、私にお開き下さい。」(ムスリムの伝承10)
「私は偉大なるアッラーに、その尊い御顔に、そして原初よりのかれの権威において、
呪われたシャイターンからのご加護を与えて下さるよう求めます。」(アブー・ダーウード
の伝承11)
● ハラーム・モスクに入ったら、義務のサラー(礼拝)時間が始まったのではない限り、
直接タワーフを開始します。もし義務のサラーが行われていたら、まずそれを行ってか
らタワーフに移ります。
● ウムラを単独で行う者、あるいはタマットゥのウムラを行おうとする者は、「ウムラの
タワーフ」から開始します。またキラーン、あるいはイフラードのハッジをする者は、
「タワーフ・アル=クドゥーム(到着のタワーフ)」から開始します。ちなみにこれは
スンナであり、義務行為ではありません。
● イフラームの解除は、巡礼の完遂か、あるいは前もって条件をつけていて巡礼を阻まれ
た場合12、または単に巡礼を阻まれた場合に行われます。
6 訳者注:「サアイ」とは、「サファーとマルワの丘」の間を「サファーの丘」から始めて3往復半するこ
とで、ハッジとウムラの根幹的行為の内の1つです。
7 訳者注:詳しくは「③イフラーム」の項を参照のこと。
8 訳者注:心身の清浄化を意図した全身の洗浄。
9 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可
能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。
10 サヒーフ・ムスリム(713)。
11 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(466)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(441)。
12 訳者注:ムフリム(イフラームに入る者)は病気や(敵による妨害などの)恐怖の状態にある場合、
イフラームの際に巡礼の形式を唱える時、こう言うことがスンナです:「もし阻むものが私(の巡礼の遂行)
を阻んだら、私の(イフラームを解く)場所はあなたが私を阻まれた所です」こうすれば、もし何かによ
って巡礼を妨害されたり病状が悪化したりしても、イフラームを解く際に犠牲を捧げなくても済むのです。
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