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預言者(神の慈悲と祝福あれ)によって言及されたハディースにおける、大きな兆候それぞれに関しての、簡潔な解説に入りましょう1。これは人間が未だ目撃も経験もしていない「不可視界」に関わる解説であるため、大半はクルアーンとハディースのテキストで述べられたものだけに限定されます。





アッ=ダッジャール(偽メシア)





ダッジャール、または偽メシアとして知られる存在の出現は、数多くの預言者のハディースにおいて述べられています2。これらのハディースでは、信仰者、不信仰者に関わらず、この人物が人類にとっていかに大きな試練と誘惑になるかが示されています。たとえば預言者ムハンマドは、過去の諸預言者もダッジャールの出現について人々に警告をしていたことを述べています。預言者ムハンマドはこう述べています。





 “過去に、片目の嘘つき(ダッジャール)に関して民を警告しなかった預言者は、一人もいなかったのです。”(サヒーフ・ブハーリー)





さらに預言者は、真正なハディースで記録されているように、礼拝時は偽メシアによる試練からのご加護を神に祈っていました。





様々な預言者のハディースは、ダッジャールに関する多くの情報を提供します。たとえば、預言者は彼が人間であることを明確にしています3。預言者は彼に関して明確に叙述しているため、ダッジャールが信仰者を騙す余地はあまりなく、真の信仰者であれば概して彼に騙されたりはしないでしょう。しかし、このことはイスラーム的知識の重要性についても強調しており、もし人が預言者によるダッジャールの叙述に関して完全に無知であれば、彼がダッジャールによる邪悪な策略の餌食になることも十分あり得るのです。





ダッジャールに関する多くのハディースには、ダッジャールの外見について説明するものも存在します。それらのハディースには、以下のようなものがあります。





イマーム・ムスリムは、預言者がダッジャールに関し、人々の前で次のように言及したというイブン・ウマルの伝承を記録しています。“神は片目ではありません。ダッジャールは右目が盲目であり、彼の目はブドウのように浮かび上がっているのです。





また別のハディースでは、預言者が次のように述べたことをイマーム・ムスリムが記録しています。“そこには(アラビア語で)三文字が記されているでしょう。カーフ4、ファー5、そしてラー6です。ダッジャールの眉間にあるこれら三文字はアラビア語の“カーフィル”を形成し、それは不信仰者を意味するのです。そして預言者は別のハディースで、すべてのムスリムはそれを読み取ることが出来ると述べています。





また預言者は、ダッジャールがもたらすものについてもその一部を明らかにしました。たとえばイマーム・ムスリムは、預言者の次のような言葉を記録しています。





 “ダッジャールは水と炎をもたらし、彼の炎は冷たい水の効果があり、彼の水は炎の効果があります。だから自ら破滅に向かってはなりません。





預言者の教友、フザイファも同様のことを述べています。“私はダッジャールがもたらすものについて、あなたよりも知っています。彼と共に2つの運河(一方は水が流れるもの)がもたらされ、もう一方は炎(が流れるもの)であり、あなたが炎に見えるものは水で、水に見えるものは炎なのです。なので、あなたがたの内でそれを見ることになる者は、水を欲したときは、炎のように見えるものから飲むのです。”(ムスリム)





あらゆる宗教的欺瞞者の場合でもそうですが、真実を認識する者であれば、彼の巧みな策略と幻覚を見破ることが出来ます。次のハディースは、その点に関して非常に明確にします。アブー・サイード・アル=フドリーは、ある日預言者がダッジャールについて詳細な叙述をし、次のような事柄に言及したことを記録しています。





 “彼は到来するが、マディーナの山岳地帯を突破することは出来ないでしょう。したがって、彼はマディーナ近隣の地域で足踏みしますが、ある人物が(ダッジャールを訪れ)彼にこう言うでしょう。「私は、既に神の預言者が告げ知らせていた通り、あなたがダッジャールであるという事実を証言します。」ダッジャールは(彼の追従者に)こう言うでしょう。「もしも私がこの(人物を)殺し、生き返らせたのであれば、それでもあなたはこの件に関して疑念を抱くのか?」彼らはこう返答するでしょう。「いいえ。」そして彼は(その人物を)殺し、生き返らせるでしょう。彼がその人物を生き返らせたとき、彼(生き返った人物)はこう言うでしょう。「神にかけて。私はあなたが(ダッジャールであることを)今以上によく証明することは出来ない。」ダッジャールは(再び)彼を殺そうとしますが、そうすることが出来ないでしょう。





 





私たちがダッジャールの逸話から学ぶことの出来ることの1つに、富と業績が人の真の価値を決めるのではないということがあります。たとえある人がこの世の富のすべてを手に入れたとしても、その心に信仰がなければその人に全く価値はありません。サヒーフ・ムスリムのハディースにはこうあります。





“ムギーラ・ブン・シュウバは述べた:私ほどに神の使徒(神の慈悲と祝福あれ)へ、ダッジャールについての質問をした者はいなかった。彼は(私に)言った。「彼はあなたに何も危害を加えることはないでしょうから、あなたにとって彼が悩みの種となることはないでしょう。」私は言った。「神の使徒よ、彼には(潤沢な)食料と水があると言われていますが。」それに関して彼は言った。「彼(ダッジャール)と、彼の手によって創り出されることを神がお許しになるもの(大量の食料と水)を通して信仰者を惑わす能力は、それらの出来事によって信仰者の信仰心を増大させる神の能力に比べると、取るに足らないものです。」





サヒーフ・ムスリムでは、預言者ムハンマドの言葉として次のようなものも記録されています。





“マッカとマディーナを除いて、ダッジャールが通過または行き来することの出来ない土地はないでしょう。両都市に続く全ての道は、列を成した天使たちによって守られているからです。そして彼(ダッジャール)はマディーナの近隣地(そこは高濃度の塩分を含み、侵食によって不毛となっている土地)に現れますが、そこ(マディーナ)は激しく揺れ、それによって全ての不信仰者と偽善者たちがそこから離れ、彼(ダッジャール)の元に向かうほどです。”





また、預言者はダッジャールの追従者たちについても述べています。





 “ダッジャールは、ペルシャのショールを身に付けたイスファハンの7万人のユダヤ教徒たちによって追従されるでしょう。”





サヒーフ・ムスリムに収録されている次の長いハディースは、ダッジャールによる搾取についての詳細と、審判の日の次の大きな兆候であるイエスの再臨について叙述します。





 “アン=ナウワース・ブン・サムアーンは、ある日の朝に神の使徒がダッジャールについて言及したことを報告した。彼(預言者)は、時に彼(ダッジャール)が重要でないかのように説明し、時に(彼による動乱が)非常に重要であるかのように説明したため、私たちは彼がナツメヤシの木の茂みの中にでもいるかのように錯覚した。その日の晩に私たちが彼(預言者)を訪れたとき、彼は私たちの顔(に浮かんだ恐怖心)を読み取り、こう言った。「あなたがたはどうしたのですか?」私たちは言った。「神の使徒よ、今朝あなたはダッジャールに関して、(時に)重要ではないかのように、そして時に非常に重要であるかのように言及されました。それで私たちは彼がナツメヤシの木の茂みの中のどこか(近く)に潜んでいるのではないかと考え出しました。」そこで彼は言いました。「ダッジャールだけでなく、私はあなたがたの心に数多くの恐怖を抱かせました。私がまだあなたがたと共にいるときに彼が現れたのであれば、私があなたがたを代表して彼と争うでしょう。しかし私があなたがたと共にいないときに彼が現れたのであれば、ある男が自らを代表して彼と争わなければならず、神は私に代わって(あらゆる悪から守るよう)すべてのムスリムの世話をしてくれるでしょう。彼(ダッジャール)は若い男で、曲がりくねった縮れ毛を持ち、片目が盲目でしょう。彼はアブドル=ウッザー・ブン・カターンに似ています。あなたがたの内、生きて彼を目にする者は、彼に対してスーラ・アル=カハフの最初の数節を唱えるべきです。 彼はシリアとイラクの間に現れ、右に左に悪事を広めるでしょう。神のしもべよ!(真実の道に)従うのです。」 私たちは言った。「神の使徒よ、彼はどれほどの期間に渡って地上に留まるのでしょうか?」彼は言った。「40日間ですが、そこには1年程の長さの1日、1ヶ月程の長さの1日、そして1週間程の長さの1日があるでしょう。そして残りの日々は(通常の)1日(と同じ長さ)でしょう。」私たちは言った。「神の使徒よ、1年と同じ長さの1日では、1日分の礼拝をすれば事足りるのでしょうか?」そこで彼は言いました。 「いいえ。あなたがたは(礼拝の)時間を見積もらなくてはなりません。」私たちは言った。「神の使徒よ、彼は地上ではどれ程の速さで歩くのでしょうか?」 そこで彼は言った。「風に流れる雲のようにです。彼は人々の前に現れ(虚偽の宗教へ)人々を導き、彼らはその信仰を肯定して彼に従うでしょう。そして彼は空に命じて雨を降らせ、作物が育つでしょう。そしてその晩、彼らの放牧させる家畜はとても高いこぶと満たんの乳と膨れた横腹を持つでしょう。そして彼は別の人々のもとに現れて彼らをいざなうでしょう。しかし彼らは彼を拒否し、彼が彼らから離れると、そこには干ばつがもたらされ、彼らには何の富も残されないでしょう。そして彼が荒廃した土地を通り、「宝を産出せよ」 と言うと、宝が出てきてミツバチの群れのように(自ら)彼の前に陳列します。そして彼が若さ溢れる人物を呼ぶと、彼を剣で真っ二つに切り裂き、(その二つの破片の距離は)射手と標的の間ほども離れます。そして彼が(その若者を)呼ぶと、彼は笑いながら現れ、その顔は(幸せに)満ち溢れていますが、その瞬間こそ、神がマリアの息子キリストを遣わすときなのです…”



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