SURA 57.鉄章 〔アル・ハディード〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃えろ。本当にかれは偉力ならびなく英明であら
れる。
2.天と地の大権は,かれの有である。かれは生を授け,また死を授ける。かれは凡てに就いて全
能であられる。
3.かれは最初の方で,また最後の方で,外に現われる方でありまた内巧なされる方である。かれ
は凡ての事物を熟知なされる。
4.かれこそは天地を6日の間に創造なされ,それから玉座に鎮座なされる方である。かれは地に
入るもの,そこから出るもの,また天から下るもの,そこに上るものを知り尽される。あなたが
たが何処にいようとも,かれはあなたがたと共にあられる。アッラーはあなたがたの行う凡ての
ことを御存知であられる。
5.天と地の大権は,かれの有である。(一切の)事物は,アッラーの御許に帰される。
6.かれは夜を昼の中に没入させ,また昼を夜の中に没入なされる。また胸に秘めることを熟知な
される。
7.アッラーとその使徒を信じ,かれがあなたがたに継がせられたものの中から,(主の道のため
に)施しなさい。あなたがたの中で信仰して(財産や技能や労力を)使用する者,かれらには偉
大な報奨があろう。
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8.どんな訳であなたがたは,アッラーを信仰しないのか。使徒は,あなたがたの主を信仰するよ
う呼びかけている。もしあなたがたが信者なら,かれは既にあなたがたの誓約を受け入れられた
のである。
9.かれこそは,あなたがたを暗黒から光明に連れ出すために,そのしもべに明瞭な印を下された
方である。アッラーは,あなたがたに親切で慈悲深くあられる。
10.どんな訳であなたがたは,アッラーの道のため施さないのか。本当に天地の遺産の相続は,
アッラーに属する。あなたがたの中,勝利の前に(財を)施し戦闘する者と,後からそうする者
と同じではない。これらの者は,(勝利の)後に施して戦闘する者よりも高位である。だがアッ
ラーは,凡ての者に善(き報奨)を約束された。本当にアッラーは,あなたがたの行うことを熟
知なされる。
11.アッラーに良い選を,選付ける者は誰か。かれはそれを倍にされ,(その外に)気前のよい
報奨を授けるであろう。
12.その日あなたは,信者の男と信者の女の,前の方や右側に,かれらの光が走るのを見るであ
ろう。(かれらには言われよう。)「今日は,あなたがたへの吉報がある。川が下を流れる楽園
のことである。永遠にその中に住むのである。それこそは,本当に偉大な幸福の成就である。」
13.その日,偽信者の男女は,信者に言うであろう。「わたしたちを待ってくれ,あなたがたか
ら光を借りたい。」(だがかれらには)言われよう。「後ろに引き返せ,そして光を求めなさい
。」そこでかれらの間に壁が蝕けられる。そこに一つの門があるが,その内側には慈悲が,その
外側には懲罰がある。
14.かれら(偽信者)は,「わたしたちは,あなたがたと一緒ではないか。」と叫ぶであろう。
かれら(信者)は言うであろう。「そうだ,だがあなたがたは自分の誘惑に任せ,(わたしたち
の没落を)待ち望・,(主の約束に)疑いを抱き,虚しい望・に欺ゥれているうちに,アッラー
の命令がやって来るに至った。欺瞞者が,アッラーに就いてあなたがたを欺いたのである。
15.今日となっては,あなたがたの身代金は受け入れられないであろう。また(明らさまな)不
信者たちはなおのこと。あなたがたの住まいは地獄の業火である。それはあなたがたの友だ。何
と悪い帰り所であることよ。」
16.(本当に)信仰するならば,アッラーの教訓に,また,啓示された真理に,心を虚しくして
順奉する時がまだやって来ないのか。以前に啓典を授っていながら,(寛容の時が)延ばされて
,心が頑固になった者のようであってはならないのではないか。かれらの多くはアッラーの掟に
背く者たちである。
17.あなたがたは,一度死んだ大地をアッラーが甦らされることを知れ。われは種々の印をあな
たがたのために明示した。恐らくあなたがたは悟るであろう。
18.施しをする男と施しをする女とアッラーに善い選を,選付けする者には,かれはそれを倍に
され,(その外に)気前のよい報奨を授けるであろう。
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19.アッラーとその使徒を信じる者,これらの者は(真理を愛する)真実な者であり,主の御目
には実証者である。かれらには報奨と光明があろう。だが信じない者またわが種々の印を嘘であ
るという者,これらの者は,業火の住人であろう。
20.あなたがたの現世の生活は遊び戯れに過ぎず,また虚飾と,たがいの間の誇示であり,財産
と子女の張り合いに過ぎないことを知れ。(現世の生活を)例えれば慈雨のようなもので,(作
物は)生長して不信心者(農夫)を喜ばせる。やがてそれは枯れて黄色に変り,次いで粉々にな
り果てるのをあなたがたは見るであろう。だが来世においては(不義の徒に)厳しい懲罰があり
,また(正義の徒には)アッラーから寛容と善賞を授かろう。本当に現世の生活は,虚しい欺時
の享楽に過ぎない。
21.あなたがたは主からの寛容(を請うため)に,相競って努力しなさい。それは天地の広さ程
の広大な楽園で,アッラーと使徒を信じる者のために準備されている。これはアッラーの恩恵で
御心に叶う者にそれを授ける。本当にアッラーは,偉大な恩恵の主であられる。
22.地上において起ころ災危も,またあなたがたの身の上に下るものも,一つとしてわれがそれ
を授ける前に,書冊の中に記されていないものはない。それはアッラーにおいては,容易な業で
ある。
23.それはあなたがたが失ったために悲しまず,与えられたために,慢心しないためである。本
当にアッラーは,自惚れの強い高慢な者を御好・になられない。
24.こんな者は物惜し・であるから,人びとにも物惜し・を勧める。仮令誰か(主の道から)背
き去っても,アッラーは元々満ち足られる御方であり,讃美すべき御方である。
25.実にわれは明証を授けて使徒たちを遣わし,またかれらと一緒に,啓典と(正邪の)秤を下
した。それは人びとが正義を行うためである。またわれは鉄を下した。それには偉大な力があり
,また人間のために種々の便益を供する。それはアッラーが,密にかれを助ける者,また使徒た
ちを助ける者を,知っておられるためである。本当にアッラーは強大にして偉力ならびなき方で
あられる。
26.われは,以前,ヌーフとイブラーヒームを遣わした。またわれは両者の子孫に預言の天分と
啓典を授けた。それでかれらの或る者は導かれた。だが,多くの者はアッラーの掟に背く者たち
であった。
27.それからわが使徒を,かれらの足跡に従わせ,更にマルヤムの子イーサーを遣わし,福音を
授け,またかれらに従う者の胸に博愛と慈悲の情を持たせた。だが禁欲の修道院制は,かれらが
自分で作ったもので,われがかれらにそれを指示してはいない。アッラーの喜びを得たいばかり
にしたことだが,かれらはそれも守らねばならないようには守っていなかった。それでわれは,
かれらの中の信仰する者には報奨を与えた。だがかれらの多くの者はアッラーの掟に背く者たち
であった。
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28.あなたがた信仰する者よ,アッラーを畏れ,かれの使徒を信じなさい。かれは倍の慈悲を授
け,また光明をあなたがたのために蝕け,それで(正しい道を)歩ませ,またあなたがた(の過
去の罪業)を赦される。本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。
29.アッラーの恩恵をかれらが少しも左右出来ないことを,また恩恵はアッラーの御手の中にあ
るということを啓典の民は知るがいい。かれの御心に適う者は,それを授かる。本当にアッラー
は偉大な恩恵の主である。
SURA 58.抗弁する女章 〔アル・ムジャーダラ〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.アッラーは,自分の夫に就いてあなたに抗弁し,なおアッラーに不平を申し立(て祈)る女の
言葉を御聞きになられた。アッラーは,あなたがた両人の議論を御聞きになられた。本当にアッ
ラーは全聴にして全視であられる。
2.あなたがたの中で,ズィハールによって,その妻を遠ざける者がある。しかしかの女らはかれ
らの母ではない。母はかれらを生んだ者以外にはないのである。実にかれらの言うことは不法な
,虚偽の言葉である。本当にアッラーは寛容にしてよく罪を赦される。
3.ズィハールを宣言してその妻を遠ざけた者が,後にその言ったことを撤回しようとする時は,
両人が栗に触れる前に,一人の奴隷を解放しなければならない。これは,あなたがたに戒告され
たことである。アッラーは,あなたがたの行うことを熟知なされる。
4.しかし(解放する奴隷を)持たない者は,両人が栗に触れる前に,2ヶ月続けて斎戒しなさい
。それをなし得ない者は,60人の貧者に食を与えなさい。これは,あなたがたにアッラーと使徒
を信じさせるためである。これらがアッラーの掟である。不信者に対しては痛ましい懲罰があろ
う。
5.本当にアッラーと使徒を拒否する者は,かれら以前の者たちが,卑しめられたように卑しめら
れるであろう。われは明白な印を下している。不信者に対しては,恥ずべき懲罰があろう。
6.その日アッラーはかれらを一斉に甦らせ,かれらの行ったことを告げられる。かれらはその事
を忘れているが,アッラーはそれを計算に入れられる。本当にアッラーは凡てのことを実証され
る御方である。
7.あなたは,天地にある凡てのものをアッラーが知っておられることを知らないのか。3人で秘
密の相談をしてもかれは4人目に常におり,5人の時もかれらの6人目に常におられる。それより
少くてもまた多くても,かれらが何処にいようとも,かれはかれらと共におられる。それで審判
の日には,かれはかれらの行ったことを,かれらに告げられる。本当にアッラーは凡てのことを
熟知なされる。
8.あなたは,秘密の相談を禁じられた者たちが,その後禁じられたことに返っているのを見なか
ったのか。かれらは罪悪と敵意と使徒への犯意とで,密議したではないか。またかれらがあなた
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のもとに来た時,アッラーがあなたに対して決して挨拶されなかった言葉(死を意味する呪いの
言葉など)で,あなたに挨拶しておいて(罵って)からかれらは仲間うちで,「何故アッラーは
,わたしたちの言ったことを罰さないのだろうか。」と言う。かれらには地獄で十分である。か
れらはその中で焼かれよう。何と悪い帰り所であることよ。
9.あなたがた信仰する者よ,あなたがたが秘密の相談をする時は,罪と敵意と,使徒への犯意と
で密議してはならない。善意と敬神の念をもって相談しなさい。アッラーの御許に,あなたがた
は集められるのである。かれを畏れなさい。
10.秘密の相談は,悪魔による(示唆)だけで,信仰する者たちを悲嘆させるためのもの。だが
アッラーの御許しがない限り,少しもかれらを害することは出来ない。それで信者たちに,アッ
ラーを信じさせなさい。
11.あなたがた信仰する者よ,集会のおりに(広く)席をあけなさいと言われた時は,直ぐ席を
譲れ。アッラーはあなたがたのために(十分な)席を与えられる。また立ち上るよう言われた時
は,直ぐ立て。アッラーはあなたがたの中信仰する者や,知識を授けられた者の位階を上げられ
る。本当にアッラーは,あなたがたの行う一切を熟知なされる。
12.信仰する者よ,あなたがたが使徒に私的な相談をする時は,相談を始める前にまず施し〔サ
ダカ〕をしなさい。それはあなたがたのために最も良く,また最も清廉なことである。もし(そ
れが)出来なくても,本当にアッラーは寛容にして慈悲深くおわします。
13.あなたがたは,私的な相談を始める前に施しをすることを尻込・するのか。仮にそれを行わ
ず,アッラーがあなたがたに悔悟を赦された場合は,礼拝の務めを守り,定めの喜捨をし,アッ
ラーと使徒に従いなさい。アッラーはあなたがたの行う一切を熟知なされる。
14.あなたは,アッラーの怒りを被った人びとを友とする者に,気付かないのか。かれら(偽信
者)はあなたがた(の仲間)でもなく,またかれら(の仲間)でもない。かれらは知っていなが
ら,偽りの誓いをたてる。
15.アッラーはかれらのため,厳しい懲罰を備えられる。本当にかれらの行うことは大悪である
。
16.かれらは誓いを(かれらの悪行の)隠れ場とし,アッラーの道から(人びとを)阻む。かれ
らは恥ずべき懲罰を受けるであろう。
17.かれらの富も子女も,アッラーに対しては,少しも役立たない。かれらは業火の仲間である
。永遠にその中に住むであろう。
18.アッラーが,一斉にかれらを復活させる日,かれらは(現世で)あなたがた(ムスリム)に
誓ったようにかれに(ぬけぬけと信者であると)誓い,かれらは(これによって)来世でも何と
かなると思っている。いやとんでもない。かれらは本当に虚言の徒である。
19.悪魔がかれらを支配し,アッラーを念うことを忘れさせた。かれらは悪魔の仲間である。本
当に悪魔の仲間は損失者である。
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20.アッラーと使徒に反抗する者は,最も卑しい者の仲間である。
21.アッラーは,「われとわが使徒たちは必ず勝つ。」と規定なされた。本当にアッラーは,強
大にして偉力ならびなき御方であられる。
22.あなたは,アッラーと終末の日を信じる民が,アッラーと使徒に反抗するような者と親交を
結ぶところを見ないであろう。仮令かれらがかれらの父や,子,兄弟や親族であっても。かれは
これらの者の心の中に信仰を書き留められ,親しく聖霊によって強められる。また川が下を流れ
る楽園に入らせ,永遠にその中に住ませられるのである。アッラーはかれらを愛でられ,かれら
もかれに満悦すろ。これらは,アッラーの一党(信者)の者である。本当に,アッラーの一党の
者こそ,非常な幸福を成就する者である。
SURA 59.集合章 〔アル・ハシュル〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃える。本当にかれは偉力ならびなく英明であら
れる。
2.かれこそは,啓典の民の中の不信心な者を,その住まいから最初に追い出し放逐された方であ
る。あなたがたはかれらが退去するものとは考えなかった。またかれらにしても,その砦だけで
アッラー(の攻撃)を防げると思っていた。だがアッラーはかれらの予期しなかった方面から襲
い,かれらの心に怖気を投げ込・,それでムスリムたちと一緒になって,自分(自ら)の手で,
かれらの住まいを破壊した。あなたがた見る目を持つ者よ,訓戒とするがいい。
3.アッラーは,仮令かれらに対し,放逐と御決めにならなくても,必ず現世においてかれらを懲
罰なされる。また,来世においては(必ず)火獄の懲罰がある。
4.それはかれら(不信者)が,アッラーとその使徒に反抗したためである。誰でもアッラーに反
抗するならば,本当にアッラーは懲罰に厳重であられる。
5.あなたがたが,ナツメヤシの木を切り倒しても,またその根の上に立たせて置いても,それは
アッラーの御許しによるもので,アッラーの掟に背く者たちを卑しめられるためである。
6.またアッラーが,かれらから(取り上げて)かれの使徒に与えた物は,あなたがたが,馬やラ
クダを駆りたてて手に入れた訳ではない。だがアッラーは,御望・の者を使徒の権限の下に委ね
られる。本当にアッラーは,凡てのことに全能であられる。
7.アッラーが(敵の)村の民から得て使徒に与えた物は,アッラーの有であり,また使徒や近親
,孤児,貧者,旅人のものである。それはあなたがたの中の,只富裕な者の間に専らわたらせな
いためである。また使徒があなたがたに与える物はこれを受け,あなたがたに禁じる物は,避け
なさい。アッラーを畏れなさい。本当にアッラーは懲罰に厳重であられる。
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8.(戦利品は)貧困な移佳者たちのものでもある。かれらは自分の家から追われ,また財産から
離れ,アッラーの恩恵と御喜びを求めて,アッラーと使徒を助けている。これらの者こそ,真実
な者である。
9.そして以前から(アル・マディーナに)家を持っていて,信仰を受け入れた者たちは,(移住
して)かれらのもとに来た者を愛護し,またかれら(移住者〔ムハージル〕)に与えられた(戦
利品)に対しても心の中で欲しがることもなく,自分(援助者〔アンサール〕)自身に先んじて
(かれらに)与える。仮令自分は窮乏していても。また,自分の貪欲をよく押えた者たち。これ
らの者こそ至福を成就する者である。
10.かれら(移住者,援助者)の後に来た者たちは,(祈って)「主よ,わたしたちと,わたし
たち以前に信仰に入った兄弟たちを,御赦し下さい。信仰している者に対する恨・心を,わたし
たちの胸の中に持たせないで下さい。主よ,本当にあなたは,親切で慈悲深くあられます。」と
言う。
11.あなたは,偽信者たちが啓典の民の中の不信心な仲間に言うのを見なかったのか。「もしあ
なたがたが追放されるなら,わたしたちは一緒に出て行くであろう。あなたがたのことに関して
は,誰にも決して従わないであろう。またあなたがたがもし攻撃されるならば,わたしたちはK
ず助けるであろう。」だがアッラーは,かれらが真に虚言の徒であることを立証なされる。
12.もしかれらが追放されても,かれら(偽信者)は,決して一緒に出て行かないであろう。も
しかれらが攻められても,決して助けないであろう。もしかれら(偽信者)が助けようとしても
,必ず背を向けて逃げ,結局かれらは何の助けも得られないであろう。
13.かれら(ユダヤ人と偽信者)の胸の中では,あなたがたの方がアッラーよりも,ずっと恐ろ
しいのである。これはかれらが,何も分らない民のためである。
14.かれらが一緒でも,しっかりと防備した村とか防壁の陰でない限りは戦わないであろう。強
いのはかれらの間の闘争心(だけである)。あなたはかれらが団結していると思うであろうが,
その心はばらばらである。これはかれらが,知性のない民のためである。
15.かれら以前にも,つい先頃,自分の行いの悪い結果を味わった者がいたが,かれらにしても
同じである。(来世においても)かれらには痛ましい懲罰があろう。
16.(かれらは)悪魔のように人に向かって,「信仰を捨てなさい。」と言う。(その人が)一
度不信心になると,かれは,「わたしはあなたと関わりはない。本当に万有の主アッラーが恐ろ
しいのである。」と言う。
17.それで両者(ユダヤ人と偽信者)は最後に,(地獄の)業火に陥ることになり,かれらはそ
の中に永遠に住もう。これが,不義の徒への応報である。
18.あなたがた信仰する者よ,アッラーを畏れなさい。明日のために何をしたか,それぞれ考え
なさい。そしてアッラーを畏れなさい。本当にアッラーは,あなたがたの行うことに通暁なされ
る。
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19.あなたがたは,アッラーを忘れた者のようであってはならない。かれは,かれら自身の魂を
忘れさせたのである。これらの者はアッラーの掟に背く者たちである。
20.火獄の住人と楽園の住人とは同じではない。楽目の住人こそ勝利者である。
21.もしもわれがこのクルアーンを山に下したならば,それはきっと遜って,アッラーを恐れて
粉々に砕けるのを見るであろう。こんな譬えを,われは人間に示すのは,恐らくかれらが熟考す
るであろうと思うからである。
22.かれこそは,アッラーであられる。かれの外に神はないのである。かれは幽玄界と現象界を
知っておられ,慈悲あまねく慈愛深き御方であられる。
23.かれこそは,アッラーであられる。かれの外に神はないのである。至高の王者,神聖にして
平安の源であり,信仰を管理し,安全を守護なされ,偉力ならびなく全能で,限りなく尊い方で
あられる。アッラーに讃えあれ。(かれは)人が配するものの上に(高くおられる)。
24.かれこそは,アッラーであられる。造物の主,造化の主,形態を授ける(主であり),最も
美しい御名はかれの有である。天地の凡てのものは,かれを讃える。本当にかれは偉力ならびな
く英明であられる。
SURA 60.試問される女章 〔アル・ムンタヒナ〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.あなたがた信仰する者よ,われの敵であり,またあなたがたの敵である者を,友としてはなら
ない。あなたがたに与えられた真理を拒否しているにも拘らず,密に好意を寄せるのか。かれら
は,あなたがたの主,アッラーを信仰しているという理由で,使徒とあなたがたを追放したので
ある。あなたがたは,われの喜びを願いながら,われのために聖戦に出かけていながら,(一方
で)かれらに好意を寄せるのか。われはあなたがたの隠すことも,現わすことも知っている。あ
なたがたの中このようなことをする者は,本当に正しい道から迷い去った者である。
2.かれらはもしあなたがたの上手に立てば,あなたがたの敵となり,かれらの手と舌を悪意をも
ってあなたがたに伸し,あなたがたが不信心になることを望んでいる。
3.復活の日においては,あなたがたの親族もまた子女も,あなたがたには役立たないであろう。
かれはあなたがたを裁決なされる。アッラーはあなたがたの行うことを御存知であられる。
4.イブラーヒームやかれと共にいた者たちのことで,あなたがたのため本当に良い模範がある。
かれらが自分の人びとに言った時を思い起せ。「本当にわたしたちは,あなたがたとあなたがた
がアッラーを差し置いて崇拝するものとは,何の関りもない。あなたがたと絶縁する。わたした
ちとあなたがたの間には,あなたがたがアッラーだけを信じるようになるまで,永遠の敵意と憎
悪があるばかりである。」イブラーヒームは父親だけにこう言った。「わたしはあなたのために
,御赦しを祈りましよう。だがわたしは,あなたのためになるどんな力もアッラーから頂けない
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でしょう。」(かれは祈った)。「主よ,わたしはあなたに御縋り申し,あなたにだけ悔悟しま
す。わたしたちの行き着く所はあなたの御許ばかりです。
5.主よ,わたしたちを不信心者の試練に陥し入れないで下さい。主よ,わたしたちを御赦し下さ
い。本当にあなたは,偉力ならびなく英明であられます。」
6.本当に,アッラーと最後の日に望・を託している者にとって,この(物語の)中には良い模範
がある。だがもし背き去る者があっても,本当にアッラーは,自足なされる御方讃美されるべき
御方であられる。
7.アッラーはあなたがたとあなたがたが(今)敵意を持つ者たちとの間に,あるいは友情を起さ
せることもあろう。本当にアッラーは全能であられ,またアッラーは寛容にして慈悲深くあられ
る。
8.アッラーは,宗教上のことであなたがたに戦いを仕掛けたり,またあなたがたを家から追放し
なかった者たちに親切を尽し,公正に待遇することを禁じられない。本当にアッラーは公正な者
を御好・になられる。
9.アッラーは只次のような者を,あなたがたに禁じられる。宗教上のことであなたがたと戦いを
交えた者,またあなたがたを家から追放した者,あなたがたを追放するにあたり力を選した者た
ちである。かれらに縁故を通じるのを(禁じられる)。誰でもかれらを親密な友とする者は不義
を行う者である。
10.あなたがた信仰する者よ,婦人の信者が,あなたがたの許に逃げて来た時は,かの女らを試
問しなさい。かの女らの信仰に就いては,アッラーがナもよく知っておられる。もしかの女らが
信者であることがあなたがたに分ったならば,不信心者の許に帰してはならない。かの女は,か
れら(不信心者)には合法(の妻)ではなく,またかれら(不信心者)も,かの女らにとっては
合法(の夫)ではない。しかしかれら(不信心者)が(マハルとして)贈ったものは返してやれ
。あなたがたが,かの女らにマハルを与えるならば,かの女を娶っても,あなたがたに罪はない
。だが不信心な女との絆を,固持していてはならない。あなたが(マハルとして)贈ったものの
返還を(不信心者のかの女の夫から)求めてもよい。またかれら(不信者)が贈ったものについ
ては,その返還の要求を(あなたがたに対して求めさせればよい)。これはアッラーの御裁であ
る。かれはあなたがたの間を(公正に)裁決なされる。本当にアッラーは全知にして英明であら
れる。
11.あなたがたの妻が,もしあなたがたの許を去り,不信心者の許に走るならば,先方(不信心
者の夫)に勝利を納めた暁には,妻に去られた者にその戦利品の中から,マハルとして贈ったも
のと同額を与えなさい。あなたがたが信奉する,アッラーを畏れなさい。
12.預言者よ,あなたの許へ女の信者がやって来て,あなたに対しこう忠誠を誓うならば,「ア
ッラーの外は何ものも同位に崇めません。盗・をしまん。姦通しません。子女を殺しません。ま
た手や足の間で,捏造した嘘は申しません。また正しいことには,あなたに背きません。」(と
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誓うならば)かの女たちの誓約を受け入れ,かの女たちのために罪を赦されるようアッラーに祈
れ。本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。
13.あなたがた信仰する者よ,アッラーの御怒りを被った者に,友情を持ってはならない。かれ
らは,不信心者が墓場の(埋葬ず・の)仲間に就いて絶望しているのと同じように,来世に就い
て絶望しているのである。
SURA 61.戦列章 〔アッ・サッフ〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.天にあり地にある凡ての有は,アッラーを讃える。本当にかれは偉力ならびなく英明であられ
る。
2.信仰する者よ,あなたがたはどうして(自ら)行わないことを口にするのか。
3.あなたがたが行わないことを口にするのは,アッラーが最も憎まれるところである。
4.本当にアッラーの御好・になられる者は,堅田な建造物のように,戦列を組んでかれの道のた
めに戦う者たちである。
5.ムーサーがかれの人びとに言った時を思い起せ。「人びとよ,どうしてあなたがたはわたしを
苦しめるのか。わたしが,あなたがたに(遣わされた)アッラーの使徒であることを,知ってい
るではないか。」それでかれらが常規を踏・はずした時,アッラーはかれらの心を曲げられた。
本当にアッラーは,(アッラーの)掟に背く者を御導きになられない。
6.マルヤムの子イーサーが,こう言った時を思い起せ。「イスラエルの子孫たちよ,本当にわた
しは,あなたがたに(遣わされた)アッラーの使徒で,わたしより以前に,(下されている)律
法を確証し,またわたしの後に来る使徒の吉報を与える。その名前は,アハマドである。」だが
かれが明証をもって現れた時,かれらは,「これは明らかに魔術である。」と言った。
7.イスラームに招かれていながら,アッラーに就いて虚偽を捏造する者以上に悪を行う者があろ
うか。アッラーは不義を行う民を御導きになられない。
8.かれらはアッラーの御光を,口先で消そうと望んでいる。だがアッラーは例え不信心者たちが
忌・嫌おうとも御自分の光(イスラーム)を現わした。
9.かれこそは,導きと真実の宗教を持たせて,御自分の使徒を遺わされた方で,例え多神教徒た
ちが忌・嫌おうとも,それ(イスラーム)を凡ての宗教の上に高く掲げさせられる。
10.あなたがた信仰する者よ,われは痛苦の懲罰から救われる一つの取引を,あなたがたに示そ
う。
11.それはあなたがたがアッラーとその使徒を信じ,あなたがたの財産と生命をもってアッラー
の道に奮闘努力することである。もし分るならば,それはあなたがたのために最も善い。
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12.かれはあなたがたの様々な罪は赦して,川が(木々の)下を流れる楽園に入らせ,アドン(
エデン)の楽園における美しい邸宅に住まわせる。それは至福の成就である。
13.またあなたがたが好む,外(の恩恵)を与えられる。アッラーの御助けと,速かな勝利であ
る。だからこの吉報を信者たちに伝えなさい。
14.信仰する者よ,あなたがたはアッラーの助力者になれ。マルヤムの子イーサーが,その弟子
たちに次のように言った。「アッラーの(道の)ために,誰がわたしの助力者であるのか。」弟
子たちは(答えて),「わたしたちがアッラーの助力者です。」と言った。そのさいイスラエル
の子孫たちの一団は信仰し,一団は背を向けた。それでわれは,信仰した者たちを助けて,かれ
らの敵に立ち向かわせた。こうしてかれらは勝利者となったのである。
SURA 62.合同礼拝章 〔アル・ジュムア〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃える。(かれは)至高の王者,神聖にして偉力
ならびなく英明であられる。
2.かれこそは文盲の者の間に,かれらの中から使徒を遺わし,印を読・聞かせてかれらを清め,
啓典と英知を教えられた方である。本当にかれらは,以前は明らかに邪道にあった。
3.まだ来ていない(預盲者以降の)人びとにも教えを授けられる。かれは偉力ならびなく英明で
あられる。
4.これがアッラーの恩恵である。かれの御心に適う者にこれを与える。アッラーは偉大な恩恵の
主であられる。
5.律法(守護)の責任を負わされて,その後それを果たさない者を譬えれば,書物を運ぶロバの
ようなものである。アッラーの印を嘘であるとする者も同様で,哀れむべきである。本当にアッ
ラーは悪い行いの者を御導きになられない。
6.言ってやるがいい。「ユダヤ教を信奉する者よ,あなたがたがもし外の人びと以上に,アッラ
ーの御気に入りであると言いはり,それがあくまでも真実であると確心するならば(天国に入れ
るはずだから今すぐ)死を請い願いなさい。」
7.だがかれらは,その手で今まで犯した(行いの)ため,決して死を請い願わないであろう。本
当にアッラーは不義を行う者を熟知なされる。
8.言ってやるがいい。「あなたがたが逃れようとする死は,必ずあなたがたを襲うのである。そ
れから幽玄界と現象界を知っておられる御方に送り返され,かれはあなたがたに自分の所業を告
げ知らせる。」
9.あなたがた信仰する者よ,合同礼拝の日の礼拝の呼びかけが唱えられたならば,アッラーを念
じることに急ぎ,商売から離れなさい。もしあなたがたが分っているならば,それがあなたがた
のために最も善い。
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10.礼拝が終ったならば,あなたがたは方々に散り,アッラーの恩恵を求めて,アッラーを讃え
て多く唱念しなさい。必ずあなたがたは栄えるであろう。
11.しかしかれらは,うまい儲けや遊びごとを見かけると,(礼拝のために)立ち上っているあ
なたを等閑にして,そちらに駆け出す始末。言ってやるがいい。「アッラーの御許(の恩恵)は
,遊戯や取引よりも優る。アッラーは,最善の給与者であられる」。
SURA 63.偽信者たち章 〔アル・ムナーフィクーン〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.偽信者たちがあなたの許にやって来ると,「わたしたちはあなたが,本当にアッラーの使徒で
あることを証言する。」と言う。アッラーは,あなたが確かに使徒であることを知っておられる
。またアッラーは,偽信者たちが真に嘘言の徒であることを証言なされる。
2.かれらはその誓いを(悪行のための)隠れ場として,アッラーの道から(人びとを)妨げてい
る。本当にかれらの行うことは,憎むべきである。
3.それは,かれらが一度信仰して,それから不信心になったためで,かれらの心は封じられ,そ
のためかれらは理解しない。
4.あなたがかれらを見る時,かれらの(立派な)風体に感心するであろう。かれらが語れば,あ
なたはその雄弁な言葉に魅せられる。だがかれらは,(何の知識もなく何を言っても分らない)
壁に寄りかかっているただの材木のようなものである。かれらはどの叫びも,自分たちのことを
いっていると考えている。かれらは敵である。用心しなさい。アッラーよかれらを滅ぼして下さ
い。何とかれらは(真理から)逸れたことよ。
5.かれらに向かって,「来なさい。アッラーの使徒が,あなたがたのために御赦しを祈るであろ
う。」と言うと,あなたはかれらが顔を背けて,微慢に背を向けて去るのを見よう。
6.あなたがかれらのために御赦しを祈っても,また祈らなくても,かれらにとって同じである。
アッラーは,決してかれらを御赦しになられない。本当にアッラーは,(アッラーの)掟に背く
者を御導きになられない。
7.かれらはこう言うのである。「アッラーの使徒と一緒の者に,施しをしてはいけません。かれ
らは結局解散されるのです。」本当に天と地の宝庫はアッラーの有である。だが,偽信者たちは
それを理解しない。
8.かれらは,「わたしたちがアル・マディーナに帰れば,そこの高貴な者が卑しい者たちを必ず
そこから追うでしょう。」と言う。凡そ栄誉は,アッラーと使徒,そしてその信者たちにある。
だが偽信者たちには,これが分らない。
9.信仰する者よ,あなたがたの富や子女にかまけて,アッラーを念じることを疎かにしてはなら
ない。そうする者(アッラーを念わない者)は,自らを損う者である。
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10.死があなたがたを理う前に,われが与えたものから施しなさい。かれは,「主よ,何故あな
たは暫くの間の猶予を与えられないのですか。そうすればわたしは喜捨〔サダカ〕をして,善い
行いの者になりますのに。」と言う。
11.定められた時がやって来た時,アッラーは誰にも猶予を与えられない。アッラーは,あなた
がたの行うことに通暁なされる。
SURA 64.騙し合い章 〔アッ・タガーブン〕
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
1.天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃える。大権はかれの有であり,讃美もまたかれ
に属する。本当にかれは凡てのことに全能であられる。
2.かれこそは,あなたがたを創られた方である。だがあなたがたの或る者は不信心者でまた,或
る者は信者である。本当にアッラーは,あなたがたの行うことを御存知であられる。
3.(かれは)真理によって天と地を創造なされ,あなたがたを形作って美しい姿になされた。ま
たかれの御許に帰り所はあるのである。
4.(かれは)天と地における凡てのものを知り,あなたがたの隠すものも,現わすものまでも知
っておられる。またアッラーは,胸の中に抱くことを熟知なされる。
5.昔の,信仰を拒否した者たちの消息が,あなたがたに達しなかったのか。かれらは悪行の結果
を味わい,また痛ましい懲罰を受けた。
6.それは使徒たちが,様々な明証をもってかれらのもとに来たのにも拘らず,「人間が,わたし
たちを導けようか。」と言ったためである。それでかれらは信じょうとせず背き去った。だがア
ッラーは,何も求められない。アッラーは,満ち足られる御方讃美されるべき御方であられる。
7.不信心な者は,甦りなどはないと主張する。言ってやるがいい。「そうではない。主に誓って
いう。あなたがたは必ず甦るのである。それからあなたがたの行なったことが,必ず告げ知らさ
れる。それはアッラーにおいては容易なことである。
8.だからアッラーとその使徒,そしてわれが下した光明を信じなさい。本当にアッラーはあなた
がたの行ったことに通暁なされる。
9.かれがあなたがたを召集なされる集合の日は騙し合いの日である。誰でも,アッラーを信じて
,善行に動しんだ者からは,様々な邪悪,不運を払われ川が下を流れる楽園にかれらを入らせ,
永遠にその中に住まわせる。これは大いなる勝利(至福)である。
10.だが信仰を拒否して,わが印を虚偽であるとした者は業火の住人で,その中に永遠に住む。
何と悪い帰り所であることよ。
11.どんな災厄も,アッラーの御許しなく起きることはない。誰でもアッラーを信仰する者は,
その心を導かれよう。本当にアッラーは,凡てのことに通暁なされる。
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12.それでアッラーに従え。また使徒に従え。仮令あなたがたが背き去っても,わが使徒の務め
は,只明確に(啓示を)宣べ伝えることである。
13.アッラー,かれの外に神はないのである。それで信者はアッラーに全幅の信頼を寄せなさい
。
14.信仰する者よ,あなたがたの妻や子女の中にも,あなたがたに対する敵がいる。だからかれ
らに用心しなさい。だがもしあなたがたがかれらを赦し,大目に・,かばうならば(それもよい
)。本当にアッラーは,度々御赦し下される御方,慈悲深い御方であられる。
15.あなたがたの富や子女は,一つの試・に過ぎない。アッラー,かれの御許に(だけ)偉大な
報奨はある。
16.だから心を尽してアッラーを畏れ,聞きそして従い,また(施しのために)使え,あなたが
た自身のスめに善いであろう。また自分の貪欲に用心する者,かれらは繁栄を成就する者である
。
17.あなたがたがもしアッラーに善い選付をするならば,かれはあなたがたのためにそれを倍加
なされ,あなたがたを御赦し下されよう。本当にアッラーは感謝にあつく大度におわします。
18.また幽玄界も現象界をも知っておられ,偉力ならびなく英明であられる。